37 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:04:08.50 ID:tp8tHGA10
『ザザ・・・鶯2より鶯1。車両が一台停車。
3人降りました。・・・おそらく刑事・・・いえ、あれは・・・。
・・・1人は岸辺露伴です。残りは刑事だと思われます。
そちらへ接近中、一分未満で接触します。』
「了解。全隊員注意せよ。鶯2〜5はグリーンライトを持て。
鶯7〜8は前後100mのクリアを確認せよ。」
『待機了解。鶯4,5,聞こえたな。』
『鶯4了解。』
『鶯5了解。』
『鶯7了解。』
『鶯8了解。』
「・・・鶯より本部、鶯より本部。電話設備工作中にトラブル。
私服警官2名の職質と思われる。例の岸辺露伴も同行。発砲許可を申請。」
『本部了解、許可を待て。』
39 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:05:18.20 ID:tp8tHGA10
露伴たちはまったく気づかないが、すでに露伴たちには2つの銃口が向けられている。
それぞれまったく別の方向から、茂みの中から露伴たちの頭部に照準を定め続けている。
露伴たちには目の前の数人の男しか見えていないが、実際には違った。
狙撃班が観測手と狙撃手それぞれ二人づつ。露伴たちが車から降りてくるのを確認した隊員も茂みに隠れている。
それに加え、少し興宮に寄った場所にもう一台のワゴンで待機する隊員もいた。
露伴たちは山狗の一小隊に完全に包囲されているのだ。
大石「どうもぉ。こんばんは。」
「スイませェん。作業中なんで入らないでもらえませんか。」
大石「お仕事中お邪魔してすみませんねぇ。警察のものでございます。」
大石と熊谷が職務質問を続ける。
露伴はそれを観察するつもりで来たのだが、それよりもなにか心に引っかかるものがあった。
露伴「(なんだ・・・なにか引っかかる気がする。胸騒ぎ・・・?)」
大石「おや、岸辺さん、どうかしましたかぁ?」
露伴「いや、なんでもないよ。」
40 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:05:56.50 ID:tp8tHGA10
そうこうしているうちに熊谷は彼らから電話番号を聞きだし、
それをメモして車へと走り出していった。
大石と男たちは険悪なムードでお互い黙りあっている。
露伴も何かが気になり、言葉を発する気にはならなかった。
まるで時間が止まっているかのように、誰も口を開かない。
時は止まっているのだろうか?大石はそんな錯覚を覚えた。
だが、時は動き出す。
『本部より鶯1。発砲許可。』
『鶯7,クリア。』
『鶯8,クリア。』
「鶯1より狙撃班・・・」
この瞬間。全ては決着した。
露伴と熊谷は頭を撃ち抜かれ、大石は鶯1の拳銃で心臓を撃ち抜かれる。
41 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:07:39.36 ID:tp8tHGA10
そうなるはずだった。鶯1がひとつのミスを犯さなければ。
普通の人間相手ならばミスとも言えないような、ほんの些細な隙を。
だが、それを露伴は逃さなかった。
露伴は、大石との会話に加わらず後ろに控えていた男の異変に気づいた。
その男は、悟られないようさり気なく作業着の胸ポケットへと手を伸ばした。
ここまでは間違っていなかった。ここまでは彼は、鶯1はミスを犯していない。
だが、次の瞬間。ほんの一瞬。時間にすれば0.何秒の世界。ここにミスが起こる。
彼は、彼の部下に狙撃を命じるよりほんのちょっぴりだけ早く・・・拳銃を見せてしまった。
だから、彼の命令とほとんど同時に露伴が叫んだ。
鶯1「オールグリーン。」
露伴「伏せろぉぉおーーーーッ!!
(天国への扉ッ(ヘブンズ・ドアー)!!!!)」
42 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:08:52.52 ID:tp8tHGA10
さすが警察官と言うべきか、いや、若さのおかげだろうか?
熊谷は露伴の掛け声に機敏に反応し、しゃがみこんだ。
熊谷を狙った銃弾は彼の頭上を通過する。
一方、露伴を狙撃しようとしていた山狗はその引き金を引くことなく、気を失った。
露伴が頭の真横で指をかなりの速さで動かしたあと、何か少年の顔のようなものが見えた気がした。
彼の意識に残ったのはここまでだった。
他の山狗も露伴の天国への扉(ヘブンズ・ドアー)が視界に入り、バタバタと倒れる。
大石を撃とうとした鶯1も意識を失った。だが、彼は意識を失う直前に引き金を引く。
彼が拳銃を出すのが早かったため、なんとか意識を失う前に引き金を引くことができたのだ。
パァン
ここまで、鶯1が拳銃を見せてから1秒と経っていない。
一瞬で全てが決まった。熊谷を狙撃した狙撃手と観測手以外は、
天国への扉(ヘブンズ・ドアー)の餌食となった。
43 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:09:43.07 ID:tp8tHGA10
露伴は気づいた。雛見沢大災害前日・・・大石の部下、熊谷が失踪している。
それが、自分がさっきから引っかかっていたことなのだと気づいた。
これに気づいたのとスタンドを発動したの、どちらが先だったか、
後で振り返っても露伴にはわからなかった。
大石「ぐぁぁあああッ!」
熊谷「お、大石さん!」
銃弾は大石の左肩を貫いた。
露伴の叫びでなんとか致命傷を免れたというところだろうか。
熊谷は大石の叫びを聞き、すぐに駆け寄ってくる。
44 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:10:39.61 ID:tp8tHGA10
小此木「おい、応答しろ、鶯1。おいッ!!
鶯、誰でもいい!!応答しろッ!!」
『こちら鶯10、もう一台のワゴンに待機しています。』
『こ・・・こちら鶯7。鶯1〜5、倒れています。
もうひとつの狙撃班も応答がありません。
無事なのは自分たちの狙撃班だけです。
狙撃は失敗、何が起こったのかわかりませんッ!』
小此木「くそッ!なんだってんだッ!?
鶯10以下、後方で待機してる連中は全員出ろッ!
狙撃班ッ!クリアが確保できんなら狙撃は中止だ。
時間稼ぎでもなんでもいい、力ずくで止めろッ!!」
『鶯7了解。』
『鶯10了解。』
小此木「三佐を呼べッ!!緊急事態だとな。」
「了解しました。」
小此木「岸辺露伴・・・なんだってんだ・・・、糞ッ!!」
45 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:11:37.42 ID:tp8tHGA10
熊谷「大石さんッ!!大丈夫っスかッ!!」
大石「ん・・・んっふっふっふ。このくらいじゃあ死にませんよぉ・・・。
それより・・・拳銃を回収してください・・・、熊ちゃん。」
大石が痛みに顔を歪めながら熊谷に答えた。
熊谷は倒れている男の手元から拳銃を拾うと、
大石の撃たれていないほうの肩を持とうとする。
熊谷「歩けますか?と、とりあえず車に乗ってください!!
応急処置を!!」
大石「1人で大丈夫です・・・。
岸辺さん・・・無事ですかぁ?」
露伴「・・・。」
露伴は何も答えず、目を閉じて険しい表情をしていた。
大石もその反応を読んでいたのか、特に気にせずに続ける。
大石「岸辺さん・・・どういう手品か知りませんが、助かりましたよ。
あなたが何かしたんでしょう・・・?」
熊谷「大石さん、はやく車にッ。」
47 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:12:36.26 ID:tp8tHGA10
少しの間の後、露伴が目を開き、大石に答える。
露伴「・・・どうやら僕の予定通りに事が進まなくなったようだ。」
大石「それは困りましたねぇ。んっふっふっふ・・・・・。」
露伴「古手梨花が、殺される。おそらく、もう時間がない。」
大石「古手さんが・・・ですか?」
露伴「神社に向かう。車を借りれないか?」
大石「私も・・・同行させてもらいますよ。」
露伴「好きにしろ、はやくしないと間に合わなくなる。」
大石「好きにさせてもらいます。・・・ん?」
大石が視線をまったく別の方向へとやる。
その視線の先には、茂みを駆け抜けてくる二人の男があった。
大石「ちぃ・・・まだお仲間がいたんですねぇ。」
露伴「(く・・・、時間がない。
これ以上使いたくないが、天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使うか?)」
48 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:13:45.28 ID:tp8tHGA10
大石と露伴はその男たちへどう対応するかを考え、一瞬動きが止まる。
だが、熊谷は止まらなかった。大石たちと男たちの間に立ちはだかる。
熊谷「大石さん!ここは俺に任せて行ってください!!」
大石「しかし、熊ちゃん・・・。」
熊谷「大石さんはオヤシロ様の祟りを暴くんじゃないんスか!?
だったら、俺にかまわず行ってください!!」
大石「熊ちゃん・・・、頼みます・・・ッ。」
熊谷「岸辺さん。大石さんを頼みます!!」
露伴「・・・。」
大石と露伴は車へと駆け出す。
熊谷は車とは逆方向に。男たちへと向かっていった。
熊谷「うおぉおおおおーーッ!!!」
59 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 18:31:30.34 ID:tp8tHGA10
鷹野「何があったの!?」
仮眠を取っていた鷹野は寝癖のついた髪を手で梳かしながら指揮車へと入ってくる。
だが、彼女が返答を求めた男は、彼女にかまう暇もないのかマイクに向かって怒鳴り続けていた。
小此木「電波妨害装置はそっちのワゴンにあるんだろうッ!?
絶対に無線を入れさせるなッ!!そうだ!!かまわんからやれ!!
発砲は許可しないィィィーーーッ!!と言っているだろうが!!」
『ザザ・・・鶯10了解。』
小此木「くそぉッ!!」
そう言ってマイクを床に投げつけると、やっと彼は鷹野に気づいたようだった。
鷹野「小此木・・・これはどういうこと?」
小此木「三佐、いらしてたんですんね。」
鷹野「えぇ、起こされたわ。何があったの?」
小此木「・・・最初は電話設備の工作中のトラブルだったんですんがね。
すったらん、ちょいと面倒なことになってきよったんですわ。
おいッ。」
小此木はそう言って他の隊員の肩を叩き、状況の説明を促す。
自分は置いてあったコーヒーに口をつけ、落ち着きを取り戻すよう努めた。
60 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 18:33:17.09 ID:tp8tHGA10
「電話工作中に警官による職務質問がありました。
隊長の判断で発砲許可を出したのですが、狙撃に失敗。
現在、後方に待機していた隊員が追跡中です。」
鷹野「狙撃が失敗!?あなた達、プロでしょう?」
コーヒーを飲み干し、空になった紙コップを投げ捨てた小此木が答えた。
小此木「例の岸辺露伴とかってぇ漫画家が一緒にいたんですわ。
何が起きたのかはわからんですが、
その場にいた隊員が全員気絶させられてますんね。」
鷹野「岸辺露伴・・・あの男が何かしたっていうの?」
小此木「やつが何者なのかはわかりませんわ。
今はやつと警官1名が車で逃走中なんですが・・・
その方向っちゅうのが問題でして。」
鷹野「どこに向かってるのよ。」
小此木「こっちに向かってるんですわ。
興宮の街に戻らんでこっちに向かっとるんがどうも妙なんですんね。」
鷹野「・・・何が言いたいわけ?」
小此木「こっちの作戦がバレてることはないと思いますんがね。
時計の針をちょっと進めたほうがいいんじゃあないんかっちゅうことですわ。」
鷹野「大丈夫なの?予定の時間より1時間以上早いわよ?」
小此木「村の子供が何人か来とるようですがね。
そっちを始末するのは簡単なこってす。
岸辺露伴っちゅうのが何者かわからん以上、それが最善かと思いますんね。」
鷹野「わかったわ・・・。」
小此木「よし、Rの確保の準備を始めろ。
監視中の鳳の隊員はそのままだ。待機してるやつらは準備をしろ。」
61 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 18:34:17.85 ID:tp8tHGA10
キキキィイイイイイ!!!
タイヤが悲鳴をあげながら、車はカーブを曲がっていく。
露伴たちが乗る車の後ろには、すでに山狗のワゴンが見えていた。
大石は右手だけで必死に運転するが、その差はジリジリと縮まっていく。
大石「く・・・追っ手みたいですねぇ。
やっぱり、無線は通じませんか?」
露伴「あぁ、変な音しか聞こえないよ。
・・・やはり僕が運転したほうがよかったんじゃないのか。」
大石「んっふっふっふ。青免持ってないと、パトカー運転させるわけにはいきません。
で、やつら何者です?園崎家の連中ですか?」
露伴「・・・。」
大石「やっぱり教えてくれませんか・・・。
・・・タバコ、吸わせてもらえませんかねぇ?」
露伴「こんなときになんだよ。」
大石「いえ、そのほうが集中力が増すんですよ。」
62 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 18:35:16.03 ID:tp8tHGA10
露伴は、大石がどうして突拍子もなくそんなことを言うのかわからなかった。
だが、彼の質問に答えない代わりにタバコの火をつけてやることにする。
大石の胸ポケットからはみ出した。すこし血が滲んだタバコの箱を取り出し、吸わせてやる。
そして車の中に転がっていたライターで火をつけてやった。
大石はタバコを咥えたまま話し始める。
大石「岸辺さん、私は思ったんですがね。
私らが、このまま古手さんところに行くとですね。
後ろのワゴンも古手さんのところに着いちゃいます。」
大石は一息、タバコを吸い、煙を吐き出す。
大石「敵を連れてっちまうのは、どうなんですかねぇ?」
露伴「しょうがないだろ。
それとも後ろのやつらを倒してから行くってのかい?」
露伴の文句に大石はニヤリとしてみせた。
大石「この先にけっこう急なカーブがありますよねぇ。」
露伴「・・・?」
63 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 18:36:06.74 ID:tp8tHGA10
大石「そこからは、古手さんのところまではなかなか近い。
走って行ってもそこそこの時間で着くと思います。」
露伴「降りろって言うのか?」
大石「飛び降りてください。
あのカーブなら、後ろの車には岸辺さんの側は死角になります。
飛び降りてから、その場に伏せてやりすごしてください。」
露伴「そうしたら、あんたは・・・。」
大石「私が古手さんのところに行っても、多分役には立ちません。
むしろ怪我人がいて邪魔になるだけですからねぇ。
だったら、敵を分散させたほうがいいんじゃあないですか?」
露伴「・・・。」
大石「ほら、もうカーブに着きますよッ!!」
64 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/03/16(日) 18:36:50.49 ID:tp8tHGA10
キィイイイィイイイイイイ!!
車がカーブに差し掛かったところで、露伴は助手席から飛び出した。
大石はハンドルをクッっと動かし、反動でドアを閉める。
だが、そのせいで車は少し道から逸れた。
ドンッ!ガガッ!!
車体が路肩の岩か何かにぶつかるが、アクセルを踏み続け、無理やり走り抜ける。
後方のワゴンからは、急カーブで大石が運転を誤ったようにしか見えなかった。
大石「熊ちゃんだけにいい格好はさせられませんからねぇ。
さぁて、地獄の淵まで鬼ごっこといきましょうかッ!!」
露伴だけを残し、2台の車はカーブの先へと消えていった。
他に追跡している車がないことを確認すると、露伴は立ち上がる。
車が行った道を行くのが最も早く古手神社へとたどり着く方法に思える。
だが、なぜか露伴は林を突っ切るべきだと、直感的に感じた。
露伴「スタンド使いは惹かれあうってやつか・・・。」
露伴はその直感に任せ、林の中へと走っていった。
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