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575 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 17:30:08.52 ID:wYOJoHgE0
※注意!※
設定はお借りしていますが、時系列的に繋がっている部分はありません。
平行世界のお話か、訪れなかった明日のお話と解釈していただければ幸いです。

『岸辺露伴は動かない 外伝〜入江京介の『王国』〜』

「すいません、僕の都合で使わせたみたいで」
「いえいえ〜、私も学校に用事がありますからね。ついで、という言い方では失礼ですね、まぁ、お気になさらずに」

露伴は今、入江京介の運転する車に同乗している。

今日も露伴は雛見沢のあちこちを訪ね歩き、祟りの起こる仕組みの調査をしていた。
主に住民に声をかけてみたが、概ね反応は露伴の思ったとおりのものが得られた。
詩音から得た感覚…この雛見沢には、綿流しの晩には何が起ころうが「オヤシロさまの祟り」になる土壌は完成している。
それは部外者の露伴から見れば、常軌を逸した感覚といってもいい。
梨花を殺すという敵は、この土壌を最大限に利用しようとしているのではないだろうか…?
その裏付けは、まぁこれだけで十分すぎるだろう。
また、もう幾つか調べ終えたこともあったが…それはまだ語るべき時ではない。
勝負は綿流しのお祭りの日になる。それまでに出来ることは全てやらねば。

576 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 17:33:23.56 ID:wYOJoHgE0
その調査を終え、そろそろ放課後だろうと学校に向かう。
今日も部活に参加するよう、朝沙都子に何度も念押しされたからだ。それだけだ。
しかし露伴の足取りは、本人は気付かないうちに軽くなっていた。

「あぅあぅ、ロハンが笑っているのです。一人でにやにやしているのです」
「…いつからそこにいたんだ。言っておくが僕は笑ってないぞ」
「あぅあぅあぅ、ひどいのです!僕はさっきからロハンの後ろにいたのですよ!」
「後ろにいてどうして僕が笑っているのがわかるんだよ。あと、お前のストーカー癖は直したらどうだ」
「あぅ?すとーかーって何なのですか?」
「後でゆっくり教えてやる。…ん?あれは…」

羽入も露伴の挙動に気付き、あぅ?と視線を前に向ける。
露伴達の通り道に立っていた家屋から、一人の白衣を着た青年が出てきたのだ。
彼は道路脇に停めていた自動車に向かう途中で露伴に気がついた。
そして人好きのする笑みを浮かべ、露伴に向かって頭を下げる。

「こんにちは露伴さん!お散歩ですか?」
「こんにちは、入江先生。えぇ…雛見沢のスケッチがてら、色々と見させていただきました
 "また"、お会いできて嬉しいですよ」
「なるほど、漫画家さんというのもカメラマンの方とやる事が似ておられるんですね」
カメラマンとは富竹のことだろう。彼も雛見沢のあちこちをフィールドワークしているようだ。
確かに似ているな、目的は全く違うが、と露伴は小さく笑う。

577 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 17:36:30.44 ID:wYOJoHgE0
今からどちらへ行かれるんですか?」
「魅音ちゃん達と約束をしていましてね。部活に参加するために学校へ行くところです」
「おや、私も今から学校へ行くところなんです。よかったらご一緒にいかがですか?」
そう言って入江は自分の車を指す。診療用の道具の入ったカバンだけが乗った一般大衆車だ。
露伴は何気なく、しかしその実抜かりなく観察を始める。

「ロハン、大丈夫なのです。入江に警戒することないのですよ」
「(まぁ…僕も彼に関してはさほど警戒はしていないが…しかし、よもや、ということはある…ッ)」
いざとなればヘブンズドアーがある…とはわかっているが、あまり乱発は出来ない。
正直に言えばここは彼と二人きりになり、『本』にして情報を得てみたいところではある。
だがここは、普通に彼と接近するだけに留めるか。露伴はそう結論を出した。
どうやら車にも怪しいところはなさそうだ。

「よろしいのですか?ではお言葉に甘えたいところですが…」
「えぇえぇ、どうぞどうぞ。私も一人で寂しかったところなんですよ」
屈託なく入江は笑い、こちらへどうぞと助手席のドアを開ける。
露伴がそこへ座ると、羽入がこっそりと後部座席に座ったのが見えた。

「(…おい)」
「あぅ?」
「(お前…車に乗って移動出来るのか?)」

その瞬間、では行きますよ、と入江が車を発進させる。
そして停車位置には、羽入が空気椅子の姿勢をしたまま取り残された。

「あ…あぅあぅあぅ!僕を忘れちゃイヤなのですぅ〜!」

586 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 18:23:13.59 ID:wYOJoHgE0
しかし入江先生…」
「何でしょう?」
「今日はこんなところで何をされてるんですか?診療所はお休みではないと思いましたが」
「あぁ、今日のお昼は私は往診に出る日なんですよ」
往診?そういうものは頼まれてから出るものではないのか?
露伴の素朴な疑問に、入江は笑いながら答える。
「雛見沢村はお年寄りの多い地域でしてね。元気に出歩かれる方もいれば、そうでない方もいる。
 そしてそうでない方のほうが、本来病院に来ていただきたい方になるんですが…」
なるほど、出歩かない、言ってしまえば寝たきりの状態の老人の方が健康状態に注意すべきだろう。
「そういう方を無理に診療所にお連れしては、かえって無理をさせることになりますからね。
 だからこうして私が往診に回る日を設けているんですよ」
山村医療も大変なものだ。露伴は入江が軽く語ったそのことの裏にある苦労を想像し、
やはり僕には漫画の方が向いているな、と思った。
「もし診療所のほうに急患が来たらどうするんです?診療所には入江先生しか医師はおられないのでは?」
「おや?よくご存知ですね」
しまった、と思うほどのことではない。
沙都子ちゃんに聞いたんですよ、と簡単に露伴は誤魔化してみせた。
「なるほど〜、沙都子ちゃんからですか。確かに彼女は診療所の常連さんですからね〜」
「常連?」

587 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 18:24:09.28 ID:wYOJoHgE0
ええ、と入江はそこで言葉を切る。どうやらあまり僕には語りたくないらしいな。
露伴はそれを察し、急患のことですが、と水を向ける。
「あぁ、それでしたら大丈夫なんです」
予め回る家の予定を事務に回しておいて、
もし急患が来たら、回っていそうな家へと電話をかけてもらう。
その連絡を入江が回った先で受け、そのまま入江が診療所へ戻るのだ。
「なるほど、うまく出来ていますね」
携帯電話もない時代、こんな仕組みがあったのか。
これは漫画に応用できそうだな。

ポケットに入れっぱなしにして今は何に使えるでもない通信端末に、
露伴はそっと手を伸ばしながら考えた。

588 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 18:24:27.70 ID:wYOJoHgE0
「ところでどうして入江先生は学校に?」
「ええ、お年寄りと同様に私達が見なければいけないものがありますので」
「子ども達のことですか?」
「えぇ、もちろんです」
もちろん、という時の入江の笑顔はとても明るい。
この笑顔がこの村を癒しているのだろう。
「明日、お祭りの前に健康診断と、予防接種を行う予定なんですよ。
 今日外出したついでに、明日の準備と打ち合わせを少々しておこうかと思いましてね」
もしよろしければ露伴さんも一緒にいかがですか、サービスで行いますよと入江が言うが、
露伴は丁重に断った。今はそんな場合ではない。
そうですかと入江は少し寂しそうに言う。
もし何かあったら必ず診療所に来てくださいね、と入江は念押しした。

そろそろ学校ですね、と入江が顎をしゃくった。
露伴にもそろそろお馴染みになってきた、雛見沢分校の校舎がカーブの向こうに見えてきた。
589 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 18:25:12.43 ID:wYOJoHgE0
---------TIPS---------
「余所者だからこそ」

通りがけに運よく露伴さんに会うことが出来た。

彼がどうしたわけか雛見沢に長期滞在するという話は、
先日沙都子ちゃん達から聞いている。
半月近い滞在なら、大抵の人は少なくない可能性で雛見沢症候群に予備感染する。
帰る前に一度、彼に予防薬を投与しなくてはならないと思っているのだが、
どうやら学校の健康診断に便乗させるのには無理があったようだ。
どうにかしてまた、別の機会に接触を持ちたいと思う。

余所の人だからこそ。
彼をあのような病気から守ってあげたい。
この雛見沢の名誉にかけてでも。

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