610 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 20:43:41.39 ID:wYOJoHgE0
「あぅあぅあぅあぅ〜!ロハン、自分だけラクしてズルしてひどいのですぅ〜!」
ようやく学校まで追いついた羽入は、露伴に向かってわめき散らした。
「大声でわめくなよ。短気な奴は嫌いだ。乳酸菌採ってんのか?」
「露伴さん?一体何をおっしゃってますの?」
「あ、いや、何でもない。それより部活の話だ、沙都子ちゃん」

ここは分校の教室だ。
いつもの部活メンバーに加え、特別ゲストの露伴の6人が、
今日の部活は何にするかと今まさに決めようとしていたところだ。

「さぁて、今日は何がいい?こないだのジジヌキのリベンジでも、おじさんはぜぇ〜んぜんOKだよ?」
「おいおい魅音ちゃん、またあの罰ゲームを喰らいたいのかい?」
「ふぇ…き、今日は露伴さんに本気のおじさんを見せてやるからね!?」
「ま、まぁまぁ露伴さん、その話は…。それより魅音、ほかにどんなゲームがあるんだ?」
「うん?ゲームなら色々入ってるよ。学校に持ってきたゲームは海外のものが多いかな」
「魅ぃちゃんのゲームはあんまりみたことのないものが多いよね」
「そうでございますわねぇ。おもちゃ屋さんでもあまり見かけないものばかりでしてよ」
「面白そうなゲームは取り寄せてもらってるからねぇ!今度レナ達もカタログ見てみるかい?」
「み〜。それはボクも是非見てみたいのですよ」

612 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 20:46:49.21 ID:wYOJoHgE0
この間と同じく、この子ども達はやかましい。
いつもならこういう姦しさは苦手な露伴も、今だけはそれに溶け込んでいる。
その様子を見て、羽入がそっと露伴に語りかけた。

「あぅあぅ、ロハンはやっぱり楽しそうなのですよ」
「(あぁ、楽しいね)」
「あぅ?ロハンが素直なのです…?」
「(この子ども達負かすとこなんて、想像するだけで最高のキブンだね…
 カッハッハッハーーー!)」
「あぅあぅあぅ、やっぱり素直じゃないのです…」

「それより皆。種目はテーブルゲームだけなのかい?
 それだったら僕の方が長く生きてる分有利だと思うんだが…」
「年上だから、っていうよりもあの記憶力は賞賛に値するからねぇ…
 確かにテーブルゲーム系は今回はやめておいたほうがいいかもしれないねぇ」
魅音がそう言うと、圭一もそうだな、と同意する。
先日のガンパイトランプでの一件がまだ、彼の中では奇跡のように映っているのだろう。
他の三人もうんうん、と頷いた。
その時である。

「それでは明日はこのようにお願いします。9時にはこちらに参りますので〜」
「はい、それでは明日はよろしくお願いします」

613 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 20:48:10.18 ID:wYOJoHgE0
入江と学校教師の声だ。教師の名前は知恵といったか。
その声を聞いた魅音の瞳が怪しく光る。きらーん☆

「そうだ!今日は監督と勝負するっていうのはどうだい皆!」
「「「え、えぇぇぇっ!?」」」
レナ、沙都子、梨花の声が綺麗にハモる中、圭一と露伴だけがわけがわからない顔をしている。
「勝負?勝負って…そもそも監督って誰だよ?」
「あ、圭ちゃんはまだ知らないかぁ。監督っていうのはね、雛見沢診療所の所長さんだよ。
 少年野球の監督もしてるから、皆『監督』って呼んでるんだよ」
「へぇ〜…。で、監督と何の勝負をするんだ?野球か?」
露伴は黙って圭一と魅音のやりとりを聞く。

「甘いよ圭ちゃん…監督はね…別名、『メイドの伝道師』って呼ばれるほどの、
 メイド萌えの変態なんだっ!」

露伴は予想だにしなかった魅音の発言に思わず目をむいた。
今、何と言った?萌え?この時代に既に確立していたのか…ッ!

614 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 20:49:39.38 ID:wYOJoHgE0
「な…何か聞くのが恐ろしくなってきたが…
 まさか、その監督と、メイドについて何か勝負するってのか!?」
「大丈夫だよ圭ちゃん、勝負はいたって簡単さ!
 『監督の話を聞く』。それだけだよ」
え、それだけ?と更に圭一の目は点になる。
露伴はそうはしない。ただ黙って、何が来てもいいように冷静な面持ちを崩さない。

おそらく既に勝負は始まっている。
それを証拠に…ッ!残りの三人の顔を見ろッ!
このッ!恐怖に慄きながらもッ!既に勝負に向けての覚悟を固めている顔をッ!

「そうと決まったらさっそく呼んで来なきゃね〜!お〜い、監督〜!…」
魅音は圭一をニヤニヤ眺めて、教室の外に入江を呼びに走っていった。

「沙都子ちゃん…そんなに話を聞く『だけ』の勝負が、怖いのかい…?」
「露伴さんはご存知ないからわからないのですわ…素人では1分も持ちませんわよ…!」
その様子を見て、露伴は考えを改めた。
あのセンセイ、ただのいい医者ってだけじゃ…ないらしいな…。

642 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 22:47:47.58 ID:wYOJoHgE0
「それではっ!今日の部活のルールを説明するっ!」
魅音が大音声で部活の開始を宣言する。
その隣には、何でこんなことになったんでしょうねぇと苦笑する入江が、
普段は魅音のものである席に座りながら皆を見回していた。

「ルールその一!プレイヤーは監督の目の前に座り、監督の話を聞く!
 ルールその二!プレイヤーがその椅子から腰を浮かした瞬間にゲーム終了!
 ルールその三!腰を浮かすまでの時間を計測し、その時間を競うものとする!」

単純明快だ。だがそれだけに裏がありそうなルールの匂いがする。
そしてこのルールだけで、圭一を除く部活メンバーは表情が変わった。

「時間は誰が計測するんだい?」
「教室の時計で計れば皆に公平だからそれで計ろう。
 皆は基本的に時計をみておくことにする。それでいい?」
「腰を上げた判定はどうするんだ、魅音?」
「お尻が1センチでも上がったらその次点でアウト!
 誰か一人、順番にその判定員をしてもらえばいい。判定員が合図した時間が終了時間だよ!」

643 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 22:48:51.95 ID:wYOJoHgE0
つまり、入江は何か話すだけで彼らの腰を上げさせることが出来る、というわけか。
露伴にはようやくゲームの輪郭が見えてきた。
ふと見ると羽入が笑顔でゲームを見ている。
きっと彼女には、このゲームがどういうものかよくわかっているのだろう。
それがとても面白いものになることは、その笑顔でわかった。

「じゃあゲームを受ける順番を決めるジャンケンを開始する!
 順番は負けたものから!ここで勝負が決まるかもしれないよぉ!?
 せぇ〜〜のっ、さ〜いしょ〜はグ〜ッ!じゃん!けん!…」
壮絶な勝負の結果、一番手は圭一に、二番手はレナに決まった。
続けて沙都子、魅音、露伴。最後に梨花が挑むことになった。

「やるね、梨花ちゃん。僕はジャンケンにはそうとう自信があったんだが…」
「み〜、時の運なのです。露伴もふぁいと、お〜☆…なのですよ。にぱ〜☆」
相変わらず大した猫かぶりだ。それだけは露伴も舌を巻くようになっていた。

「監督、さっき話したように、私達の前で『思いっきり語ってくれたら』いいからね」
「わかりました。それでは、久しぶりに本気を出しますよ…!」
入江の表情が変わった。その瞳はもう窺い知れない程にオーラが違うッ! 露伴はそれを見て取り、感服した。この男、一流のスタンド使いと同等の「波紋」を感じるッ!

それでは…ゲームスタートだッ!
644 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 22:49:17.82 ID:wYOJoHgE0
---------TIPS---------
「不審な男」

「それでは、また明日はよろしくお願いしますんねぇ〜!」
「はい、よろしくお願いします」
造園業者の社長を名乗っている男は、そう言って白いワゴンに向かう。
今日は後日行う草木の手入れの打ち合わせに来たのだ。
それと入れ替わるように学校の校庭に乗り入れてくる車がある。
男は車を出そうとして、その車が見知ったものであることに気がついた。
「入江せんせぇ〜!ご精が出ますんね。先生も明日の打ち合わせですんね?」
「おや。貴方のお仕事も明日でしたか」
「うえっへっへっへ。うるさくてたまらんから勉強なんか出来るはずないんでしょうなぁ。
 先生が皆を診てる間に、ワシらが草木を切っちょくって寸法ですわ」
「なるほど、では聴診器は早めに済ませておかないといけませんね」
「あぁい、ワシらも音が出るモンはなるべく後回しにしますんね。
 そのへんはまた明日、よろしくですんね」
そんな会話をしながら、車を発進させる。そしてふと入江の車を見ると。
見知らぬ男が、入江の車から降り立った。

645 名前:236 ◆UuZF2thJYM [] 投稿日:2008/01/01(火) 22:49:57.11 ID:wYOJoHgE0
その立ち居にありえないような殺気を感じ、
男は思わず視線を横に流してしまう。

車から降り立った男は自分のほうには構わず、さっさと校舎に入っていった。

気のせいだったのだろうか。
体も細く、上背もないその男からは、
今まで男が見たことも感じたこともない『覇気』があった。

あいつは一体誰だ。

その事を後で入江に尋ねておくことを肝に銘じ、
男は再び車を発進させた。

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