36 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 01:48:38.13 ID:sjX/wdi/0
2008年、6月26日、早朝。
今日は、今年の綿流しの二日前である。

圭一と魅音は、目覚ましの音と共に布団から起きだした。
手紙を受け取り、メールを出したのは昨夜のこと。
返信が来ているかもしれない、と圭一は朝食もそこそこにPCを立ち上げる。
そんな様子を見ながら朝食を作る魅音。
子ども達はまだ起きてこない。

あの頃は中学生だったのにね。
今じゃ私、こんなおばちゃんだよ?露伴さん。

「ダメだ、やっぱり来てないな」
「そうかぁ。多分個人用のアドレスだとは思うんだけどねぇ」
そう言いながら、圭一がダイニングにやってくる。
…そっか。そう考えると、彼もまたおじさんか。
中学時代のはつらつ振りはすっかり影を潜め、落ち着いた面差しを得た圭一。
私も彼も、すっかり歳を取った。

37 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 01:49:28.84 ID:sjX/wdi/0
「お祭り前に締め切り上げておいて正解だったんじゃないかい?」
「あぁ。ちっとキツかったけど、こんなことになるんなら大正解ってやつだな。
 あいつらももう家族で祭り、って歳でもないしなぁ」
圭一は、今は小説家をやっている。
もともと父親のつながりから同人活動で小説を出し始めたのだが、
その作品が一部の層に対して大当たりした。
大学を卒業してからはその収入だけで生活が行えるほどとなり、
出版社からも原稿のオファーが舞い込み始める。
…口先の魔術師、というあの頃のニックネームは、こうした形で昇華された。

私もねぇ。考えてみれば、変わったよねぇ。

魅音は出来上がった朝食を圭一と一緒に食べながら、ふと昔を思い出していた。

38 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 01:51:55.96 ID:sjX/wdi/0
さんざん婆っちゃや母さんと揉めて入った大学。
私は、園崎の一員として、外の世界を学ぼうと必死だった。
だから、大学は敢えて地元ではなく、都会の大学へ行った。

大学3回生の時、婆っちゃが他界した。
後を追うように公由のお爺ちゃんも亡くなり、村の運営が混乱を始める。
あの頃の梨花ちゃんは高校生ながら、本当にがんばってくれた。
そして詩音も。地元に残った園崎として、村の力になった。
「お姉は何も心配しなくていいです。だからきっちり4年で卒業してください」
何言ってるのよ、自分こそ看護婦さんの仕事できてんの〜?と混ぜっ返しながら、
心の中では本当に感謝していた。
母さんも園崎組の運営と共に、雛見沢を影から見守る仕事を続けた。

そして更に翌年のこと。
園崎組に最大最後の危機が訪れる。

暴対法が、施行されたのだ。

40 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 01:52:59.64 ID:sjX/wdi/0
暴対法、正式名称は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」。
これにより指定暴力団となった園崎組は以後、徐々に興宮への影響力を失い始めた。

葛西さんは「これも時代なのでしょう」と、団員の以後の生活を守るべく、
様々な「カタギ」の仕事を見つけ出るために奔走していた。
引退したはずなのに、団員を想う人柄の善さは葛西さんらしい。
折りしもバブル崩壊の煽りを受けながらのこの活動には、地域に広く繋がりを持った園崎家の力が生きることになる。
興宮市の工場などが経営の苦しい中、多くの人を引き受けてくれたのは忘れられない。

そして、私が大学を卒業した翌年のこと。

園崎組は、正式に解散することになった。

46 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 02:23:13.31 ID:sjX/wdi/0
以後、園崎家は新たに生きる道を模索することになる。
興宮に生きる親戚達も、必死で時代を生き抜こうと懸命だった。
そんな流れの中、私はずっと一緒だった圭一に愚痴ることもあった。

園崎家って、これからどうするんだ?

わかんない。でも…雛見沢のために生きていきたいな。

そっか。そうだな。ダム戦争からずーっと守ってきたんだもんな、この村。
魅音ならきっと守れるよ。何てったって、生粋の雛見沢っ子だからな。

う〜ん…。でもね、思うんだ。
古いものを守ることも大切だけど、皆がこうして新しい生活を始めてるとさ。
何ていうかね…おじさん、無力だな、って思うこともあるの。

無力?

47 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 02:23:32.33 ID:sjX/wdi/0
うん。…力にモノを言わせる時代は終わったんだよ。
今は皆、自分のことや家族のことだけで精一杯でしょ?
そんな皆に私、何も出来ない。…何も、出来ないんだよ。

魅音…。

だってさ…。っく、あたしじゃ…何もできないよ…。
悔しいよ…だって、だって、あたし達は…肝心なときだけ皆を煽って…
それで、今はこんなピンチなのにさ…ぇっく…どうしようもないんだよ…

…そんなことはないぞ。

えっ…?

お前が『見守ってる』ってこと、皆わかってるさ。
もう今は、誰かに頼ったり、力で押す時代じゃない。魅音が言ったとおりな。
これからは「皆ががんばる」でいいじゃねぇか。
あいつががんばってる。だから俺もがんばる。
大丈夫だ、皆、ちゃんとそう思ってるさ。

48 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 02:23:58.36 ID:sjX/wdi/0
…ありがとう…ありがとう、圭ちゃん…。

うわっ、何だよ!こんなとこでそんなこと…

だって…だって…っ!ふぇぇ〜〜ん…うっく、ひっ、う〜っ…
ありがとう…圭ちゃん…っく…

「何、遠い目してるんだよ」
「ふぇっ!?」

思わず我に返る。
圭一はもうとっくに朝食の皿を片付けていた。
顔を赤くしながら、慌てて魅音も食べ始める。

「そろそろあいつら起こすぞ」
「あ、うん。任せたよ」

もう、子どもも高校生。
露伴と過ごしたあの時の自分達の年齢を軽く追い越している。
魅音は残ったご飯を食べきり、子ども達の朝食の盛り付けを始めた。

53 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 03:08:01.05 ID:sjX/wdi/0
「いってきま〜す」
子どもが学校に行く。
基本的に二人とも仕事は自宅でやるので、送り出すのは二人の仕事である。
圭一は原稿の締め切りを既に上げているので、今日は家事をやってくれるのだろう。
魅音は安心して仕事部屋に入った。

今の魅音の仕事、園崎グループの会長。
それは、はっきり言って自室で行うべき仕事ではない。
副業として、雛見沢村の観光協会の事務員という肩書きも持ってはいるのだが。
こちらも正直に言って同様であろう。

バブル経済以後、園崎の親類が経営する事業を統合し、
地域密着型の一大グループを設立することになったのだ。
有限会社であった一族の店は次々と統合され、積極的に建て直しを計った。
一部だけ突出しても意味がない。全員が生き残るための監督を。
まさに「皆ががんばるから私も頑張る」である。
その全体の指導と名目上の会長を、若き頭首である魅音が請け負ったのである。

54 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 03:09:27.36 ID:sjX/wdi/0
全盛期は毎日が死ぬ気の仕事だった。
暴力団時代の事務所を間借りし、必死に色々な役場や施設へ連絡し、
書類に判を突き、会計監査を行う。
会長である魅音自身が、他のものと同様にそうした仕事を行っていくのだ。
この激務を乗り越え、園崎一族は最終的に、全員が生き残ることが出来たのである。

"なぁ、お前大丈夫か?"

う〜ん…ちょっとグロッキーかも…あはは…

"ちゃんと休めよ。時間が出来たら一緒に気分転換に行こうぜ"

新人作家がなぁに言ってるんだか!そっちの締め切りが終わるまでそんなのダメダメ!

"そんなこと気にする余裕があるんなら大丈夫だな、はは"

(…そんなことないよ)
(淋しいに決まってるじゃない)
(電話だけじゃ…嫌だよ…)

(圭ちゃんに…会いたいよ)

55 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 03:10:06.78 ID:sjX/wdi/0
よっす。

…どしたの圭ちゃん。こんな時間にこんなとこで。

はは、やっぱりお前忘れてたんだな〜。仕事熱心なのもいいが、自分のこともちゃんと労われよ。

ふぇ?

ほれ。…誕生日おめでとう、魅音。

え?え!?…あ!今日17日!?

そうだよ!ここに来る前に詩音に電話したら、お姉ならまだ事務所でしょうって言うからよ。
仕方ないからここまで持ってきちまったぜ。

ふぁあぁ…ケーキだぁ…
…ありがとう。圭ちゃん。

ハッピーバースデー、魅音。ほら、蝋燭もあるから、吹き消そうぜ。

56 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 03:10:42.25 ID:sjX/wdi/0
うん、うん!…圭ちゃん、電気消して。

おぅ。…コホン。ハッピーバースデー、トゥーユー…

圭一が恥ずかしそうに一人で歌い始める。
蝋燭の明かりだけが照らす事務室の中で、その歌声だけが響く。
そして…歌が終わった。

ふーっ。あはは、さすがにこれだけの蝋燭吹き消すのは大変だねぇ!
さ、圭ちゃん、電気電気…っ!?

圭一がそっと、暗闇の中で魅音を抱きしめてくる。
その腕が、疲れてささくれ立った魅音の心を、優しく包んでくれる。
魅音は、そのやさしさに、束の間甘えたくなる。だから、抱きしめ返した。
そしてそっと、暗い中でお互いの顔を見つめあいながら。

二人はそっと、唇を重ねた。

65 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:16:03.42 ID:sjX/wdi/0
多忙を極める二人であったが、こうした折々の骨休めには必ず一緒になれた。
圭一の仕事が物書きであったことも助かった面がある。
基本的に物書きは締め切り直前の1ヶ月が山場だ。
そこを乗り切ったら、自分の時間はゆっくりと持つことが出来る。

そして、まだグループの母体が元暴力団事務所にあった1994年。
仕事が一区切りついた魅音と締め切りを終えた圭一は、久しぶりに遊びに出かけた。

レナや沙都子は今どうしているだろう、といった話を夕食のときにした。
レナは地元の専門学校を卒業し、保母さんになったという話を聞いている。
かぁいい園児達をお持ち帰りしたりしちゃダメだぞ〜、とからかうと、
「もう大人だし、そんなことはしないよ」と笑いながら返されてしまった。
沙都子は監督や富竹の勧めもあり、防衛大学の特待生になってしまっていた。
…ある一部隊が沙都子のトラップに惚れこみ、本気で口説きにかかったらしいと聞く。
部隊の名前は…よく覚えていないが、わんわんだったかバンバンだったか。そんな名前だった。

66 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:16:33.92 ID:sjX/wdi/0
夕食を終え、魅音の借りている部屋に向かって二人は歩く。
いつもどおり圭一は魅音を送って帰るつもりなのだろう、と思っていた。

でも。その日は、ちょっと違っていた。

「魅音、ちょっと上がっていっていいか?」
「…いいけど。散らかってるよ?」
「大丈夫。さんきゅ〜な」

言葉のほどには散らかしてはいない部屋に、お邪魔します、と律儀に声をかけて圭一が上がりこむ。
魅音は部屋に入り、靴下やスカートを脱ぎ、部屋着に着替えた。
もうこれぐらいのことではお互い別に動揺はしない。それだけの分別は持つ年齢であり、付き合いだ。

スカートなんて、圭ちゃんに言われなかったら今でもはいてなかったのかな、
なんてことを考えながら、魅音は部屋のベッドに腰を下ろした。

67 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:17:16.16 ID:sjX/wdi/0
「あのさ」
「何?どうしたのさ、改まって」
「やっぱり、こういうのは男から言うべきだと思ってさ」

そう言いながら圭一が、自らの鞄から小さな箱を取り出す。
そしてそっとそれを魅音に渡してきた。
それを受け取り、魅音がそっと箱を開ける。
華奢な、プラチナのリングがそこに輝いていた。

「もしかしてこれ…婚約指輪…?」
「…お、おう。…何か、改まって言うのも照れるけどよ〜…」

「俺は…お前みたいにタフじゃないし、凄くもない。
 けど、俺はお前の傍で、ずっとお前を支えたい」
「…。」
「理屈じゃない。俺はお前だ、って思ったんだ。
 理解したい、分かち合いたい、一緒にいたい。
 だから…お前に今日、言おうって決めたんだ」

「結婚しよう、魅音」

69 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:17:56.73 ID:sjX/wdi/0
「圭ちゃん…私で…ほんとにいいの…?」
「…何だよ、嫌だったらもう離れてるよ!」
「私…いいお嫁さんになれないかもしれないよ?
 圭ちゃんも大事だけど、皆も大事なの。今私が離れたら、きっと皆…」
「あ〜あ〜あ〜!もう喋るな!」

そう言って圭一は、顔を真っ赤にしながら魅音を引き寄せる。
そして少し強引に、彼女の唇を奪った。

「そんな魅音だから、好きになったんじゃねぇかよ…ッ」
「圭ちゃん…」
「皆を見捨てない、皆を守ろうとする、やさしい魅音が好きだ。
 だから、その仕事は全力でやればいい。
 俺は…そうやってるお前が帰ってくるのを、家で待ってる。
 そしてお前に『お帰り』を言うんだよ。
 そんなのでもいいだろ…?」

泣いていた。あふれ出すものが止まらなかった。
嗚咽を漏らしながらも、しかし魅音は圭一をまっすぐ見ながら、返事をした。

「圭ちゃん…ありがとう…ひっく…
 ふつつかものですが…っ、よろしくお願いします…!」

70 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:18:38.02 ID:sjX/wdi/0
そんなこんなで、二人で15年やってきた。
その裏や表には、語りだせば止まらないエピソードがある。
だが、そんな回想をしながらでは仕事が手につかない。

仕事は今では書類やネットを介しての事務作業だけでどうにかやっていけるまでになった。
事務所は移転し、もっと多くの事務員であふれていることだろう。
やっと『会長』らしい業務にまわった、とも言えるが。

仕事をやり始めて一時間も経ったころだろうか。
部屋の外から、圭一の呼ぶ声が聴こえた。

「魅音!露伴さんからの返事が来てるぞ!」

慌てて魅音は部屋を飛び出した。

71 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:19:09.87 ID:sjX/wdi/0
―メールありがとう。
 雛見沢にはお祭りの日に行くことは伝えたと思う。
 ただ、こっそりと行くのでそこは了承してほしい。
 沙都子ちゃんや梨花ちゃんの目に触れることは避けたいからね。
 出来れば君達には、当日の彼女達の予定などを聞きだして僕に教えてほしいんだ。
 それから僕らの会う段取りをつけよう。

 あ、君達の予定がもし合わないようだったら、遠慮なく言ってほしい。
 その場合はおそらく、以後はメールだけのやりとりになると思うが…。
 その点はまた返信してくれ。
 では。

なるほど、俺達以外には会いたくないのか、と圭一は少し不満そうに呟く。
魅音にもその理由はよくわからない。何故、会いたくないのだろう。
…そして、この胸にひっかかるなにかは、何なのだろう。

何かを決定的に掛け違えているような、この感覚は。

とりあえず返信をしなくてはいけない。
返事は…

72 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:19:54.84 ID:sjX/wdi/0
選択肢
A、当日はそれなりに忙しいですが、時間には余裕があります。
B、当日はずっと詰めてて忙しいので、残念ながら会うのは厳しいです。

>>78までに多かったほうで

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/13(日) 04:23:00.96 ID:Sx248RbTO


未来から来てたんだし、今でも姿が若いままだからじゃね?

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/01/13(日) 04:24:30.73 ID:1Onahoba0
じゃぁ

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:26:47.45 ID:0NmgTlVo0
Aのが面白くなりそうなのでA


79 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:33:29.01 ID:sjX/wdi/0
―お返事お待ちしてました。
 当日はそれなりに忙しいですが、時間には余裕があります。
 またスケジュールがわかり次第、時間や場所を連絡します。
 お会いできるのを楽しみにしています。
              圭一 魅音

即座に返信を返し、圭一はふと魅音に言った。
「どうした?何か腑に落ちない、って顔してるけど」
「うん…。何なんだろうね。何か変な感じなんだよ」
何がおかしいのだろう。
ただ、決定的に不自然なことが目の前に突きつけられているのに、
それに何故か気付けない。もやもやとする頭を振り、魅音は圭一に笑いかける。

「旦那様、本日のお昼ごはんは何でございますか?」
「…焼きそば」

中学生の頃は飯盒炊爨で得意そうな顔をしていた夫を思い出し、
また魅音はそっと笑顔になった。
料理下手はこれでも随分マシになったのだが、炒める料理ばかり作るのは何故なんだろう。
まだまだ知らないことがこの歳になってもあるのだなぁ、と、
魅音は少し可笑しな気分になった。
84 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 04:47:21.77 ID:sjX/wdi/0
----TIPS----
「幸福の群像」

ねぇ。あの日の罰ゲーム、覚えてる?圭ちゃん。

あ〜…忘れた忘れた。

もう、照れちゃってさ〜!私の初めてをあげたのに、その態度はいただけないな〜?

何だよ!そもそも、お前がムチャなゲームするから負けちまうんじゃねぇか!

あっひゃっひゃっ!そうだねぇ、あの時は圭ちゃんが教室の隅っこで…

…?

…あれ?なんだっけ?隅っこで…。顔を赤くしてた…ような…

思い違いじゃねぇか?あの罰ゲームはそもそもレナが言い出したんだろ?

ん〜。そうだったっけ。あはは、おじさんももう歳かもねぇ!

おいおい、うら若き女子大生がそんなこと言っちゃっていいのかよ〜!

あはははは、まぁまぁ!それより圭ちゃん、今日はどこに行く?

そうだなぁ…久しぶりのデートだからなぁ…。…。…?

…!…。♪

91 名前: ◆UuZF2thJYM [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 05:04:43.18 ID:sjX/wdi/0
----TIPS----
「彼方からの手紙」

2008年、M県S市杜王町―

なんだこれは?
これが僕の第一印象だ。

海外からもたまにファンレターはくるが、財団法人からのファンレターってのは初めてだ。
発、アメリカ。SPW財団?
おいおい、僕の漫画は台湾版とヨーロッパ版しか出てないんじゃなかったのか?
よっぽどコアなファンがいるんだな、あの自由の国ってとこには。

まぁ、たまにはこんなのも面白いな。何かのネタに仕えるかもしれん。
そう思い、僕は中の便箋を抜き出し、読んだ。
便箋には僕の漫画の絵と、一行だけ、日本語でこう書いてあった。

「思い出したか?」

…。やるね。
これは結構、不利な『賭け』だったと思うんだけどな。

僕はその便箋をシュレッダーにかけ、跡形もなくしてしまった。
さあ、続きを描こう。その後は…どうしてやるかな。

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