357 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:23:15.21 ID:dikdU/660
  1983年(昭和58年)
       6月13日(月)




沙都子「露伴さーん、もう朝ですわよー?起きてくださいまし。
    梨花も、起きるんですわよぉー。」

露伴が目を覚ますと、朝食のいい匂いが部屋いっぱいに広がっていた。
狭い家ならでは雰囲気である。

露伴が鉄平を追い払った翌日。沙都子の日常はしっかりと取り戻されていた。

358 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:24:15.04 ID:dikdU/660
露伴「んー、流石にまだ眠いぜ・・・、今日は寝かしてくれよ。」
沙都子「だめですわ、露伴さん。しっかり朝から起きないと生活のリズムが狂ってしまいますわ。
    それに、せっかくご用意した朝食が冷めてしまいますわよ。」
露伴「わかったよ、ッたく・・・ガキのくせに世話好きなんだから・・・」
沙都子「何か言いまして?露伴さん。
    聞こえませんでしたわ。もう一度言ってくださいますこと?」
露伴「・・・何も言ってないよ。・・・いただきます。」
沙都子「召し上がれでございますわ。」

昨日の疲労がまだとれていない露伴は不機嫌だった。
しかし、沙都子の笑顔を見ると、少し心が安らぐのだった。

360 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:25:39.58 ID:dikdU/660
沙都子と梨花が戸締りをし、露伴達は家から出た。

沙都子「私たちは学校に行きますけど、露伴さんはどうなさいますの?」
露伴「あぁ、勝手に村を取材するからさ。
   自転車もあるし気にしないでくれよ。」
沙都子「今日の夜もお泊りになりますわよね?」
露伴「ん、あぁ、沙都子ちゃんたちがいいならお願いしたいんだが・・・。」
沙都子「露伴さんは私の恩人ですもの、お断りするはずがありませんわ。」
露伴「じゃあ、今晩もお願いするよ。おっと、忘れないうちに渡しとこう。
   これ、少ないけど食費にでもしてくれよ。」

そう言うと、露伴は昨日鉄平から巻き上げた1万円を渡そうとした。

361 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:26:18.00 ID:dikdU/660
沙都子「あら、露伴さん。恩人からお金を頂くなんてできませんわ。」
露伴「ガキが変な気を使うなよ。ほら、学校に遅刻するぜ。」

露伴はそう言うと、沙都子に1万円札を握らせ、学校へと追い出した。
時間が思ったより過ぎていることを知った沙都子は走りながら露伴に叫ぶ。

沙都子「行ってきますわぁー!夕方には帰ってこないとだめですわよーっ!!」
露伴「・・・いってらっしゃい。」

露伴は沙都子に聞こえないように呟いた。

362 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:27:21.34 ID:dikdU/660
沙都子と梨花がいなくなり、露伴は一人今日の予定を考える。

現在の露伴が最も接触すべき人物は鷹野三四だ。
しかし、彼女は診療所に勤務している。その診療所は自衛隊管轄の施設だ。
さらに言うなら、彼女が山狗と手を組んで梨花殺害を目論んでいるのだとすれば、
施設はまさに敵の懐の中ということになる。

保険証も身分証明書も持たない露伴が気軽に訪れるには診療所というのは都合が悪い。
軽い仮病で行くなら、保険証くらいはないと不自然だ。
保険証も身分証も持たない人間なら、そうそう気軽に病院に行くものではない。
いや、そもそも保険証も身分証もないならそれだけで十分に不審な人物である。

363 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:28:08.46 ID:dikdU/660
自衛隊の秘密裏の研究施設。そこに訪れた不審な若者。
その不審な若者である露伴が鷹野三四に探りを入れられる状況がつくれるだろうか?
最悪天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使うとしても、人目は避けなければならない。
周囲の人間にも天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使うのは元の世界に戻ってしまう可能性があるからだ。
露伴は診療所への訪問は危険が多すぎると考えた。

もちろん、綿流しの前日までに接触ができなければ、無理を承知で行くことも考えなければならない。
しかし、まだその段階ではない。

羽入「ロハン、今日はどうするのですかー?」

先ほどから暇そうに露伴の周りにいた羽入が話しかけた。

露伴「うるさいな、考えてるんだから黙ってろよ。」
羽入「あぅあぅ。」


367 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:33:03.74 ID:dikdU/660
鷹野三四への直接的な接触は現時点では不可能だ。
鷹野三四への接触の足がかりとなるかもしれない、富竹ジロウ、入江京介との接触も直接的には行えない。
入江は鷹野と同様に診療所勤務だし、富竹は普段どこにいるのかさえわからない。
診療所で待ち伏せし、彼らのうち誰かを尾行するのも危険が伴う。
流石に自衛隊にマークされれば、ただ事では済まないかもしれない。
露伴は彼らに自分から接触することをあきらめた。

露伴「図書館に行く。」
羽入「興宮の図書館ですか?」
露伴「あぁ、34号文書の内容には興宮の図書館で調べたと思われる内容が多いんだ。
   34号文書を手に入れた竜宮礼奈は大災害を予見していた。
   だから図書館に行けば何か梨花を殺害する理由がわかるかもしれない。
   (鷹野三四の動機に繋がる情報が得られるかもしれないからな。)」
羽入「なるほどなのです。案内するのです。」
露伴「いや、興宮の地理はわかってるからいい。」
羽入「じゃあ付いていくのです。」
露伴「邪魔だよ。梨花のところにでも行けよ。」
羽入「露伴が真相を見つけるなら、僕がついていないといけないのです。」
露伴「勝手にしろ。付いてきても何も教えないからな。」
羽入「あぅあぅ。沙都子だけじゃなく僕にも少しは優しくしてほしいのですー。」
露伴「ふんッ。沙都子ちゃんには泊めてもらった恩を返しただけさ。」

露伴と羽入は興宮へと向かうことにした。

368 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:34:12.05 ID:dikdU/660
露伴の時代と図書館の場所は変わっていなかったので、図書館まではすんなりと着いた。
建物自体は改装でもされたのだろうか。露伴の時代とは趣が違っていた。
また、図書館の面積自体も狭く、2Fのみとなっていた。1Fは役所が使っているようだ。

露伴は図書館に入ると、郷土資料のコーナーへと直行した。
所蔵図書の検索システムなどはないため正確なことはわからないが、
郷土資料のコーナーは露伴のいた時代より充実しているようだった。

露伴はてきぱきと雛見沢に関する資料を集め、調べ始めた。

370 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:35:45.02 ID:dikdU/660
もう昼の2時を過ぎただろうか。
露伴が図書館に着てからすでに4時間は経過している。
しかし、この図書館で露伴は有益な情報を見つけることはできなかった。

もちろん、34号文書の裏はとれた。
露伴がまだ知らなかった雛見沢の過去も知ることができた。
しかし、鷹野三四の動機に繋がるような情報は一切得られなかった。

露伴「腹が減ったな。どこか食いに行くか。」
羽入「僕は、食べれないので、露伴の好きにしていいのです。」
露伴「幽霊ってのも難しいな。美味しいものを食べることもできないんだからな。」
羽入「あぅあぅ。でも僕は梨花の味覚を共有することができるのですよ。
   だからお土産はシュークリームがいいのです。」
露伴「ふーん。やっぱりお前スタンドなんじゃないのか?梨花の無意識の。」
羽入「違うのです。僕は梨花が生まれる前から存在しているのです。」
露伴「まぁ、どっちでもいいけどさ。」
v 露伴は図書館から出て興宮の町を歩くことにした。

371 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:37:19.25 ID:dikdU/660
??「んだてめンなろぉぉォオオオオオッ!!すったるぁ、おるぁあッ!!」
??「をるぉんったら、ぅッってん場合じゃえぇなぞぉぉぉおお!!」
??「敵だなてめー。」

町を歩く露伴の耳に罵声が聞こえてきた。
気になってその罵声の主を覗いてみると、露伴は驚いた。
罵声の主はちょっと古風なガラの悪い学生のようだった。
露伴が驚いたのは罵声の主ではなく、罵声を浴びせられるほう、
おそらく絡まれているであろう少女だった。

露伴「(・・・魅音ちゃん・・・?)」
魅音?「わ、悪かったって、言ってるじゃないですかぁ・・・。
    ・・・もぅ・・・許して、・・・ください。・・・っく、・・・えっく・・。」
??「な、なんだこらぁ!泣いたら済むってもんじゃぁねーぞ、こらぁ!!」
??「泣くくれぇなら、弁償しろっつってんだろぉおおがあ!!あぁあん!?」
??「敵か?敵か!?敵だなてめー。」

376 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:38:36.73 ID:dikdU/660
露伴は厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだね、と思っていたが、知人ならしょうがないと覚悟を決めた。

露伴「おい、その辺にしとけよ、泣いてるじゃあないか。」
??「んだこらぁぁぁああ!!なんじゃあおどれはぁぁぁああ!!」
??「っこつけってぇんかぁぁああああああ!こらぁぁああ!!」
??「お前も敵か?敵だなてめー。」

露伴はこのド低脳達を相手にするのは面倒だとおもい、先に仕掛ける。
最も露伴に近かった男の顔をぶん殴るッ!

露伴「うるせえなあーーーッ!!
   僕は馬鹿の相手をするのが一番嫌いなんだよッ!!」

男達は露伴に殴りかかる、露伴はひょいひょいとかわし、反撃を決めた。
露伴は手加減をせず男達の急所を狙った。男達は各々攻撃された場所を押さえてうなっている。

露伴「まだこの岸辺露伴とヤろうってのかい?」
??「こ、こいつやべぇ・・・ずらかるぞっ!」
??「い、いてぇ・・・お、覚えてろよッ!」
??「オ・・・オレ・・・学校いくよ・・・、アツアツのピッツァも食いてぇ!」

男達は露伴にかなわないとわかると、すぐさまバイクを起こして逃げていった。

378 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:39:51.37 ID:dikdU/660
露伴「魅音ちゃん。大丈夫かい?」
魅音?「あ・・・、その、ありがとうございました。」
露伴「うーん。なんだか雰囲気が違うな、魅音ちゃんだよな?
   学校は行かなかったのかい?」
魅音?「おねぇのお知り合いですか?初めまして、私は園崎詩音。
    園崎魅音の双子の妹なんです。助けて頂いて本当にありがとうございました。」
露伴「あぁ、君が詩音ちゃんか。なるほどな。」
詩音「あれ、もしかしておねぇから聞いてます?」
露伴「いや、魅音ちゃんから聞いたわけじゃないんだがな。
   僕は露伴。岸辺露伴だ。」
詩音「あー、あなたが露伴さんですか。おねぇから聞いてますよ。
   なんでも漫画家志望の人が雛見沢に来てるって、昨日電話で聞きました。」

381 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:41:38.41 ID:dikdU/660
露伴「ふふ、知っているなら話がはやくていいね。
   ちょっと今から昼飯を食いに行こうと思ったんだけど、案内してくれないか?
   あまりこの町のことはわからないんでね。」
詩音「それ、もしかしてナンパですかぁ?おねぇに言いつけちゃいますよ?
   中学生が好きな漫画家にナンパされたって。」
露伴「おいおい、よしてくれよ。確かに君は可愛いけど、中学生に手を出す気はないよ。
   君のお姉さんはおもしろいからな。ちょっと話を聞いてみたかっただけさ。」
詩音「へぇー、お世辞うまいんですねー。それじゃあナンパされちゃおっかなー?」
露伴「雛見沢に来てから和食しか食べてないんだ。
   イタリアンでも食べれる場所を案内してくれよ。」
詩音「私はもうお昼は食べちゃいました。
   デザートと飲み物でもおごってくれれば、一緒にお茶してあげますよ?」
露伴「あぁ、いいよ。聞きたいこともあるしね。
   (発症する可能性がある人物はチェックする必要があるからな)」

382 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2007/12/31(月) 18:42:19.38 ID:dikdU/660
詩音「話がわかる人ですねー。私も聞きたいことがあったんですよ。
   露伴さん、やらかしてくれたみたいじゃないですか。」
露伴「ん?何のことだい?」
詩音「おねぇと圭ちゃんのことですよ。その辺、よーく教えてもらいますからね。
   さ、行きましょう。私のお薦めのお店はこっちです。」

詩音は露伴の腕に抱きついて引っ張った。

露伴「お、おい、そんなにくっつくなよ。」
詩音「あれー?テレてるんですかぁ?
   ナンパしたんだから、このくらい喜んでくださいよー。」

店に行くまでの間、恥ずかしがる露伴は詩音にからかわれ続けられたのだった。

CHAPTER16へ
TOPへ