200 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:13:17.47 ID:qTxbOB2C0
ドタンバタンッ!!
ドタンバタンッ!!

誰かが騒ぐような音を聞き、露伴は目を覚ました。
まだ暗い。夜が明けている気配はない。
起き上がり、辺りを見渡してみる。
ドタバタと騒いでいたのは羽入だった。

露伴「ん・・・。何を騒いでるんだ。うるさいぞ。」
梨花「ほら、あんたが騒ぐから起こしちゃったじゃない。
   今はあんたのことを見える人間がいるのよ。」

露伴が寝ぼけた目の焦点を合わせると、冷蔵庫の前で戯れる梨花と羽入の姿があった。
その床にはワインらしき瓶と開いたキムチのパック、それからオレンジジュースが出ていた。

201 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:13:59.40 ID:qTxbOB2C0
露伴「何をやってるんだ?それ、ワインじゃあないのか?」
梨花「ちょっと羽入にお仕置きをしてたのよ。」
羽入「あぅあぅ。辛いのですー。梨花のばかー。」
梨花「まだお仕置きが足りないようね。」

梨花はそう言ってキムチをもう一口食べた。
羽入はさらにドタバタと暴れながら抗議をしていた。

露伴「人が寝てるのに騒ぐんじゃあないよ。ったくッ。」
梨花「そうね、このくらいにしてあげるわ。」

そう言うと、梨花はキムチを冷蔵庫にしまった。
そしてグラスを二つ用意し、露伴のいるほうへと持ってくる。

202 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:14:41.74 ID:qTxbOB2C0
梨花「あなたも飲む?ワインしかないけど。」
羽入「梨花ぁー、飲んじゃ駄目なのです。」
露伴「お前と飲むってのは気に食わないが、もらうとするよ。」
梨花「口の減らないやつね。
   まぁ、飲むと文句を言ってくるやつよりはマシね。」

露伴と梨花は沙都子を起こさぬように二人で飲み始めた。
いつもなら、梨花はオレンジジュースで薄めてワインを飲む。
味覚を共有する羽入がうるさいからだ。
しかし、今回は露伴に馬鹿にされるのが嫌でそのまま飲むことにした。

204 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:16:54.07 ID:qTxbOB2C0
露伴「いつも飲んでるのかい?」
梨花「たまにね。羽入が文句を言うから頻繁には飲まないわよ。」
露伴「そういえば僕もシュークリームをおみやげにしろとか言われたな。」
梨花「辛いものを買ってくると喜ぶわよ。とびきりのやつをね。」
羽入「あぅあぅあぅーあぅーーあぅあぅ。」

もはやワインのせいでまともに喋れなくなった羽入が何か抗議しているようだった。

梨花「羽入に、あなたの推理を聞いたわ。」
露伴「・・・。(勝手に話すなよな、この馬鹿が。)」
梨花「私は、そんなこと考えたこともなかったわ。
   富竹と鷹野が死ぬことにより山狗の警備が薄くなる。
   そして私は殺されるんだと思っていた。」
露伴「軍隊ってやつを甘く見てるだろ。
   たとえ二人が死んでも警備を解いたりはしない。
   間違いなく警備を強化するさ。」

206 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:17:49.49 ID:qTxbOB2C0
梨花「そうね。私も羽入から聞いて納得したわ。
   100%警備を強化しないとしても、何回か警備が強化される世界があって、
   1回くらい私が助かる世界があってもおかしくないものね。」
露伴「ふん、なかなか鋭いじゃないか。
   僕は警備を強化する可能性のほうが高いとは思うが、それも絶対じゃない。
   君の言うとおりだ。」
梨花「そうすると、あなたの言うとおり、
   山狗を超える組織、または山狗が私を殺すということになるわね。」
露伴「あぁ、山狗の場合は部隊全てなのか、一部なのかはわからないがね。」


ここで二人の会話は途切れる。二人はしばし沈黙を続けた。
露伴は特に気にも止めずにワインを飲み続けている。
時折聞こえる沙都子の可愛いいびきや寝言を楽しんでいるようだ。

207 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:18:43.53 ID:qTxbOB2C0
露伴とは対照的に、梨花は飲むのをやめ、何かを考え込んでいるようだった。
長い長い沈黙の末、梨花はやっと何かを心に決めたようだった。

梨花「露伴、あなたに謝ることがあるわ。」
露伴「なんだよ、急に。」
梨花「私はあなたに何をしても無駄だと言ったわ。
   でも、あなたは鉄平を退け、沙都子を助け出した。」
露伴「ふんッ、ちょっとは見直したってわけか?」
梨花「えぇ、そうよ。
   私は過去に何度挑んでも沙都子を助けることはできなかったわ。
   鉄平が帰ってきた時点で終わり。私にはどうすることもできないといじけていた。
   しかしあなたはその運命を退けた。たった一日で、いえ、違う。
   たった数時間のうちに私が何十年も退けられなかった運命を退けた。」
露伴「それで?だからどうしたって言うんだよ。」

208 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:19:57.23 ID:qTxbOB2C0
梨花「私はあなたに託してみようと思う。」
露伴「・・・どういうことだ?」
梨花「私はあなたが嫌いよ。だから本当は伝えたくなかった。
   けど、あなたなら私を殺す犯人を暴いてくれるかもしれない。
   だから託そうと思うの。」
露伴「だから何を託すんだよ?話が見えてこない。」
梨花「入江が、あなたに会いたいと言っていたわ。
   沙都子を助けてくれた礼を言いたいと。野球の練習をしているときにでも会いに来てほしいそうよ。」
露伴「それは・・・願ってもないことだが。
   野球の練習ってのは?」
梨花「興宮小学校のグランドでやってるわ。たしか、次の練習は木曜日だと思う。」
露伴「木曜日・・・綿流しまで日がないな。」
梨花「そうね。別に診療所に行ってもいいと思うけど。」
露伴「僕の能力は、人前で使えない。診療所は自衛隊の人間もいるんだろ?
   会うなら、確かに野球の練習で会ってから二人きりになるのが都合が良い。
   時間はなくなるが、それがベストだろう・・・。」

そう言うと、今度は露伴が考え込んでしまった。
梨花は邪魔をしないように羽入をからかっていた。

210 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:20:56.09 ID:qTxbOB2C0
露伴「うん、木曜に会うことにする。
   それより、なぜ入江と会ったんだい?」
梨花「嫌に鋭いわね・・・。」
露伴「ふふふ。これは興味で聞いただけだよ。」
梨花「午前中は診療所に行っていたのよ。
   あなたにはまだ教えてなかったわね。沙都子が発症したのは言ったわよね?
   雛見沢症候群はね、一度発症するともう元には戻らないのよ。」
露伴「・・・。沙都子ちゃんは普通に見えるが・・・。」
梨花「入江の言い方をすれば、
   薬で発症レベルを抑えられているだけ、
   という言い方になるわ。」

211 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:22:13.99 ID:qTxbOB2C0
露伴「もう少し詳しく話せよ。」
梨花「症候群の発症は発症レベルL1(-)〜L5(+)に分類されるらしいわ。
   今の沙都子の状態はL3(-)。一般的な雛見沢の住人と変わらない。
   ただ、一度L5状態になった沙都子は一般の住人より過敏になっているそうよ。
   スズメバチに刺されたのと似ていると言っていた気がするわ。」
露伴「アナフィラキシーか。つまり、沙都子ちゃんは薬を与えないとすぐに発症すると?」
梨花「そういうことになるわね。沙都子は普通の子よりも心理的ストレスを受けている。
   だから投薬をやめれば、すぐに発症レベルは上がると考えられるわ。
   ただ、あなたが鉄平を退けてくれたおかげでストレスはちょっと減ったみたいよ。
   今日の検査はそいう面では改善が見られたそうよ。」
露伴「そうなのか・・・。薬を飲んでいるところは見たことないが?」
梨花「いちいち鋭いやつね。沙都子はあなたに見られたくないのよ。
   今は朝と夜の2回。あなたが起きる前とお風呂に入っている間に注射を打っているわ。」
露伴「・・・そうかい・・・。」

212 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/03(木) 17:23:19.21 ID:qTxbOB2C0
梨花「そろそろ、私は寝るわ。
   明日に響くと困るから。あなたも、明日は忙しいと思うわよ。」
露伴「ん?明日は何かあるのか?」
梨花「それは私からは言わないでおくわ。
   沙都子が言いたそうだったから。じゃあ、おやすみなさい。」
露伴「あぁ・・・。」

梨花が眠ったあと、露伴は羽入に話しかける。
羽入はずっと酔って気持ち悪がっていたが、だいぶ戻ったようだった。

露伴「おい、おまえがオヤシロ様なんだよな?」
羽入「そうなのですよ。」
露伴「雛見沢症候群ってのは・・・おまえのせいなのか?」
羽入「あぅあぅ・・・。それは・・・僕にはなんとも・・・。」
露伴「ふん・・・。もしそうなら、ぶん殴ってやりたかったんだがな。」
羽入「あぅあぅ。僕のせいじゃないのです。」

露伴は羽入を無視して布団に入る。

雛見沢症候群にとりつかれた人々。
沙都子だけではない、あの少女、園崎詩音もそうだ。
大石や赤坂もそうなのかもしれない。
彼女たちの不幸を考えると、露伴は胸が熱くなった。

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