516 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:12:24.68 ID:vZcue+Vw0
露伴とレナは無人の教室へと戻ってきた。
教師や営林署職員が学校にいるうちは施錠されないようだ。
レナが自分の机に座ったので、露伴は隣の机に腰掛けた。
露伴「それで、何の用なんだい?」
レナ「露伴さんはなんだと思うのかな?かな?」
露伴「さっきから考えてるんだけど、思いつかなくてね。」
レナ「あれれ、露伴さんはなんでもお見通しだと思ったのになぁ。」
露伴「それじゃあ、僕が推理できる範囲の話なんだな・・・。
・・・圭一君のこととかかい?」
517 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:13:45.41 ID:vZcue+Vw0
レナ「ぶー。ざんねんでしたー。違うよーぅ。
レナも圭一くんと魅ぃちゃんのことは応援してるんだよ?」
露伴「そうかい。昼間ので怒ってるのかと思ってね。」
レナ「ううん。露伴さんの言うとおりだし、レナは二人のこと応援するよ。」
露伴「そりゃよかった。レナちゃんを怒らせると鉈で殴られるかねないからね。」
レナ「あれ?露伴さんの前で鉈持ってきたことあったかな?」
露伴「いや、なんとなくイメージだ。それより、何の話だい?」
レナ「うーんとね・・・、お父さんの話なんだけど・・・。」
露伴「僕はレナちゃんのお父さんに会ったことないぞ。」
レナ「あ、うん。そうなんだけど、ほかの人には相談しずらくって。
露伴さんなら何かいい答えを教えてくれるかと思ったんだよ。」
露伴「ふーん。まぁ、話してみなよ。」
レナは父について話す。いや、正確には彼女の両親。
それと父の愛人についての話だった。
518 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:14:23.62 ID:vZcue+Vw0
要約すると話はこうだ。
彼女の父は母と別れてから仕事もせずに愛人に貢いでいた。
その愛人が行方不明になり、またよろしくない店に通い続けている。
どうしたらいいものだろうか。
短くまとめると、この3行が彼女の話だった。
もう少しレナが話した内容を詳しく書いておこう。
519 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:15:47.40 ID:vZcue+Vw0
彼女の一家は母の仕事の都合で雛見沢から茨城へと引っ越した。
その後、母は不倫をし、最終的には離婚。レナを引き取ろうとする。
しかし、レナは父と雛見沢に戻ることを決めた。
彼女たちは雛見沢に戻ってきた。母の代わりの慰謝料と共に。
雛見沢に戻ってからの父は定職につかなかった。
母からの慰謝料は父が働かずに日々を過ごすのに十分な金額だったのだ。
父の日々とは、その金を使い、興宮の風俗店に通う日々。
そしていつしか見つけてきた愛人に貢ぐ日々へとなった。
最近はその愛人の行方がわからなくなり、父は再び店へと通うようになった。
以前からレナは父をなんとかしなければと思っていたらしい。
しかし、他人に相談しずらく、自分の心に留めていたのだという。
そこで、雛見沢の人間ではない露伴に、相談をしてみようかと考えたそうだ。
520 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:16:42.37 ID:vZcue+Vw0
露伴「ふーん。まぁ大体はわかったよ。で?
僕にどうしてくれって言うんだい?お父さんをぶん殴って働かせればいいのか?」
レナ「あはは、それで働いてくれればいいんだけど・・・。
どうしたらいいのかなって思って聞いてみたんだよ。」
露伴「レナちゃんはどうしたらいいと思うんだい?」
レナ「うーん、やっぱりお父さんにはちゃんと働いてほしいと思うかな。かな。
お父さんとちゃんと話したほうがいいのかな、って思うよ。」
露伴「そうかい。じゃあ、話は終わりでいいよな?」
露伴は机から立ち上がり、教室を出て行こうとする。
レナは意味がわからず、露伴を眺めていたが、露伴が帰ろうとしていることに気づき声を出す。
レナ「はぅー、露伴さんひどいよ。ひどいよ。
まだレナの話は終わりじゃないよ。」
521 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:18:11.98 ID:vZcue+Vw0
レナの制止を聞き、露伴は再び机に腰掛けた。
露伴はなにやら不満そうに口を開いた。
露伴「レナちゃん、人に相談する場合。2つのパターンがある。
ひとつはどうしたらいいかまったくわからない場合。
もうひとつは、どうしたらいいかはわかっているが、それが正しいのか自信がない。
賛成されるしろ反対されるしろ他人に後ろ押ししてもらって選択をしたい場合だ。
いまの君はどっちだい?」
レナ「うーん・・・。一応、後者になるのかな?かな?」
露伴「そうだね。父にどうして欲しいのか、君はもう考えている。
それで、なんで僕に話したんだい?村の人間じゃないからかい?」
レナ「・・・。」
522 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:18:57.75 ID:vZcue+Vw0
露伴「さっきのパターンの話に戻るぜ?
前者の場合なら、僕に相談してくれれば僕も思いつくことを答えるよ。
君より年上なんだし、僕に相談してくれてもいいと思う。
でも、後者なら、僕に相談するのが正しいのかい?」
レナ「はぅ・・・。じゃあ誰に話せばいいのかな?かな?」
露伴「それは、僕にはわからないが僕じゃあないと思うぜ。
たとえば、君にとって魅音ちゃんは何だい?」
レナ「魅ぃちゃんは、友達・・・かな?」
露伴「その友達は、君が相談を持ちかけたら乗ってくれないのかい?
君の意見を後押しして助けてくれないのかい?」
レナ「魅ぃちゃんは、相談に乗ってくれるとおもうけど・・・。」
523 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:20:05.52 ID:vZcue+Vw0
露伴「父が無職で恥ずかしいってかい?それとも愛人に貢いでて恥ずかしいか?
そんなことで相談できないような友達なら、僕はいらないね。」
レナ「はぅ・・・。」
露伴「僕は康一君っていう親友がいるがね、もし僕が君の立場ならすぐに相談するね。
友達っていうのはそういうもんじゃないのか?」
レナ「うん・・・。」
露伴「おいおい、僕だって好きでこんなこと言ってるんじゃあないんだぜ?
察しのいい君ならわかるだろ・・・。」
レナ「あはは。そうだね、露伴さんは意地悪なフリして、いい人だからね。」
露伴「ふん。そういう余計なことは言わなくていいよ。」
レナ「あはは、ごめんね、ごめんね。
ちゃんとレナの友達に相談するね。」
露伴「あぁ、そうしてくれよ。」
524 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:20:43.92 ID:vZcue+Vw0
レナ「でもでも、レナは露伴さんも友達だと思ってるんだよ?」
露伴「・・・それはどうだろうね。」
レナ「あはは、素直じゃないな、露伴さん可愛いな。」
露伴「う、うるさいぞ。さっさと君の身近な友人に相談しろよ。」
レナ「あはは。そうするね。聞いてくれてありがとう。露伴さん。」
露伴「・・・。
・・・僕も、君の友達なんだろ?」
レナ「うん。露伴さんも友達だよ。あはは。」
レナの顔はとても可愛らしい笑顔だった。
父の話をしているときのレナはずっと悲しい顔をしていた。
露伴は自分が彼女を笑顔にさせたと思うと、少しうれしくなるのだった。
露伴ももう雛見沢の子供たちの友達なのだ。
525 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:21:34.80 ID:vZcue+Vw0
話を終えた露伴たちは帰ることにする。
二人は再び校庭を抜け、別れるところまできた。
レナ「それじゃあ、露伴さん。今日は本当にありがとね。」
露伴「あぁ、大したことじゃないよ。」
レナ「うーん。とっても大切なことを教わったと思うよ。
友達ってとっても大切だと思うな。」
露伴「それじゃあ、友達に相談するだけじゃなくて、
友達の相談にも乗ってやるんだな。」
レナ「そうだね。最近、魅ぃちゃんに何かあるのかな?かな?」
露伴「やっぱり、レナちゃんは鋭い子だ。猫をかぶりすぎだよ。」
レナ「あはは。なんのことかな?かな?」
露伴「まぁ、魅音ちゃんより詩音ちゃんのほうに悩みがあるんだが。」
レナ「詩音ちゃん・・・?圭一くんが言ってた妹さんかな?」
527 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:22:36.29 ID:vZcue+Vw0
露伴「あぁ、あんまり姉妹仲がよくないみたいでね。
どうにかしてあげたいんだけど・・・。(発症されるわけにはいかないからな。)」
レナ「そっか、じゃあレナも魅ぃちゃんから相談されたらちゃんと聞いてあげるね。」
露伴「あぁ、そうしてあげてくれよ。
それじゃあ、そろそろ暗くなってくるし、帰ろうか。」
レナ「そうだね、露伴さん、またね。」
露伴「あぁ、またね、気をつけるんだよ。」
レナは嬉しそうに帰っていった。
露伴も沙都子の待つ家へと歩き出す。
すると、朝から大人しくしていたやつがしゃべり始めた。
羽入「ロハンはみんなに頼られているのですね。」
528 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:23:51.62 ID:vZcue+Vw0
露伴「さぁね。僕は知らないよ。」
羽入「あぅあぅ。お祭りの出し物を任されたり、
レナの相談に乗ったりすごいのですよ。」
露伴「梨花も言っていただろう。祭りの件は、実行委員会のテントに入れれば、
富竹と鷹野の死の情報が一番早く入手できる。
綿流しまでに鷹野とは接触するつもりだが、彼女の死を止められるかはわからないからな。
(僕は止める気は元からないけどな。こいつにはこう言っておいたほうがいいだろう。)」
羽入「そうなのですか?ボクはそんなこと思いつかなかったのです。
梨花もロハンもすごいのです。」
露伴「レナちゃんの件も同じだ。彼女の家庭環境が発症の要因になっている可能性がある。
その影響を少しでも取り除いておいただけだ。」
羽入「だったら、ロハンがレナのお父さんを殴って仕事させたほうがいいんじゃないのですか?」
露伴「それじゃあ何の解決にもならないだろう。馬鹿だな。」
羽入「あぅあぅ・・・。」
529 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/08(火) 22:25:11.65 ID:vZcue+Vw0
露伴「レナちゃんには、ちょっと悪いことをしたかな、とは思うけどね。」
羽入「そうなのです。もっと親身に相談してあげればいいのに、ロハンは素直じゃないのです。」
露伴「そういうことじゃない。彼女は両親のせいで恋愛に対して嫌悪感を持っているみたいだった。
僕はレナちゃんは圭一君にそんなに本気じゃないと思っていたんだがね。
その嫌悪感から本気になれていないのかもしれない。」
羽入「ロハンの言うことはよくわからないのです。あぅあぅ。」
露伴「魅音ちゃんと圭一君をくっつけようとしたのは失敗だったかなってことだよ。
レナちゃんも圭一君を好きかもしれないってことさ。」
羽入「レナは圭一を好きだと言っていたのです。
ロハンは聞いていなかったのですか?」
露伴「・・・少し黙ってろ。オヤシロ様ってのは馬鹿の神様なのか?」
羽入「あぅあぅー。神様に馬鹿って言っちゃいけないのです。
馬鹿っていうロハンが馬鹿なのですー。あぅあぅ。」
露伴「ふんッ。」
露伴は羽入を無視して帰りを急ぐ。
沙都子がもう料理を始めている頃だろう。
今日はなんとか沙都子に怒られない時間に帰れるようだ。
566 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/09(水) 00:02:58.14 ID:VnyNuKnW0
■TIPS
----罰ゲーム----
圭一と魅音は仲良く下校する。
今日は露伴が来たこともあり、話題には尽きない。
楽しくしゃべりながら歩くうちに、魅音の家への曲がり角が近づいてくる。
圭一「じゃあさ、綿流しのお祭りのときは俺が司会やるって。
露伴さんのすごさをみんなに伝えるのは俺の仕事だっ!」
魅音「そうだね。圭ちゃんが司会をやれば客寄せはばっちりだねぇ。
私は何で盛り上げようかなぁ。」
圭一「他の部活メンバーで出し物でもやればいいんじゃないのか?」
魅音「うーん、梨花ちゃんの奉納演舞があるからねぇ。
沙都子も露伴さんの手伝いをするって聞かなそうだしねぇ。」
圭一「そうだよな、沙都子のやつすっげぇなついてるもんなぁ。
年の離れた兄妹に見えるぜ。」
魅音「兄妹ねぇ・・・。おっと、もう家だね。
じゃあ、圭ちゃん。また明日ねー。」
568 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/09(水) 00:03:53.68 ID:VnyNuKnW0
ついに魅音の家への曲がり角へと到着した。
魅音は圭一に別れを告げ、立ち去ろうとした。
圭一「あ、魅音・・・ちょっと待ってくれ。」
魅音「うん?おじさんはバイトがあるからそんなに時間がないんだよ。
長話なら、また今度聞くよ?」
圭一「いや、あの・・・そんなに時間はかからないぜ・・・。」
魅音「どうしたの圭ちゃん、顔真っ赤だよ?
もしかして、愛の告白ー?おじさん照れちゃうなー。あっはっはー。」
圭一「いや、ち、ちがうんだよ。
魅音、ちょっと目を閉じててくれ。」
魅音「うん?こうでいい?」
そう言って魅音は素直に目を閉じた。
圭一は覚悟を決める。
569 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/09(水) 00:05:07.66 ID:VnyNuKnW0
圭一も目を閉じ、そっと魅音の唇に自分の唇を重ねた。
魅音の体がビクッっとするのがわかる。少し力みすぎて上唇が痛かった。
だが、こうなってはもはや関係ない。圭一は心の中で必死に数を数える。
圭一「(1・・・、2・・・、3・・・、。)」
3つ数えると圭一は唇を離した。
目を開けると、魅音も目を開け、じっと見つめてくる。
圭一「ああ、あ、、そそ、その・・・。」
なんとか言葉を出そうとするが、気が動転していてうまくしゃべれない。
そんな圭一を制して魅音が口を開いた。
魅音「圭ちゃん・・・あの、もう1回・・・。」
そう言って魅音は再び目を閉じ圭一に顔を近づけた。
571 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/09(水) 00:07:13.32 ID:VnyNuKnW0
混乱していた圭一はその魅音の顔を見ると、なぜか気持ちが落ち着いてきた。
そして再び唇を重ねる。今度は上唇が痛かったりしない。
秒数も数えたりはしない、二人が満足して唇を離すまで口付けは続いた。
2度目の口付けを終え、落ち着きを取り戻した圭一は言い訳を始める。
圭一「あ、あの・・・露伴さんの罰ゲームが・・・さ・・・、
『魅音に3秒以上キスをする』だったからさ。その・・・後回しにしてもあれだし。
その、あの・・・。」
圭一は喋れば喋るほど混乱していく。
魅音はそれを聞き、ちょっとがっかりしたような表情を見せて俯いた。
それがさらに圭一を混乱させる。もはや圭一の言葉は言葉になっていなかった。
魅音「圭ちゃんさ・・・2回目は、罰ゲームじゃないよね・・・?」
魅音がポツリと呟いた。
圭一はなぜか反射的に答えていた。
圭一「あ、あぁ、罰ゲームじゃない・・・。」
その答えを聞くと、魅音は少しだけ照れるように微笑み、もう一度目をつむった。
圭一はその魅音の表情を見ていると、再び自然と口付けをしていた。
3度目の口付けを終えると、魅音はとびっきりの笑顔を見せた。
そして、別れを告げ、家へと走り去ってしまう。
圭一は返事もできずに立ち尽くしていた。
いまだに何が起こったのか自分でもわかっていないようだった。
CHAPTER22へ
TOPへ