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25 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:34:31.14 ID:87786avZ0
  1983年(昭和58年)
       6月15日(水)


沙都子と梨花は学校へと行き、露伴は一人村を散策していた。
露伴には鷹野三四と接触する方法が思い浮かばなかった。
明日の入江との接触があるので無理な行動はしないという前提がある。
そのため、露伴には偶然富竹や鷹野に会う可能性にかけるくらいしかすることがなかったのだ。

いや、正確には露伴は入江に会うまでは何もするつもりはなかった。
しかし、梨花達の家にいるわけにもいかず、羽入がうるさいので村を散策しているだけだった。

28 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:35:26.57 ID:87786avZ0
露伴は詩音に会って話をしようとも考えていた。
しかし、昨日の夜には電話が繋がらなかった。

そしてこの日の夕方、学校が終わっているであろう時間に電話をかけたがやはり繋がらなかった。
露伴は雛見沢に来てから初めて、何事もない日を過ごすことになる。
1日を終え、帰宅してからも特に変わったことはなかった。

変わったことといえば。
魅音からの伝言で明日の綿流し実行委員会の会合への出席をするよう言われたこと。
レナが学校を休んだらしいということくらいだろうか。

会合は出し物の都合だろう。レナも父と話し合いでもしているに違いない。
今の露伴にとってとくに興味が出るようなことは何一つなかった。

29 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:36:54.84 ID:87786avZ0
  1983年(昭和58年)
       6月16日(木)


この日も露伴は午前中は無駄に過ごす。
特にするべきこともなかったし、富竹や鷹野に出会うという幸運に恵まれることもなかった。

午後になると、露伴は入江に出会うため興宮へと向かった。
野球の練習が始まるのは学校の授業が終わってから。
子供たちが興宮まで自転車で移動する時間を考えると、まだまだ始まらない。

露伴は雛見沢探索に飽き、図書館で時間を潰すためだけに早めに興宮に来たのだ。
しかし、図書館にも露伴の暇を潰せるものはなかった。

戯れに新聞を見てみるが、自分にとっては過去の出来事。
無論、知らないことばかりだが、露伴にとって意味はない。
一面に史上最年少将棋名人誕生と書いてあったので、将棋の本を読んでみたりもした。

30 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:38:18.12 ID:87786avZ0
ただただ無駄に時間を過ごす露伴に羽入は呆れているようだった。

羽入「露伴・・・、綿流しのお祭りまではもう時間がないのです。
   それまでに梨花を、いえ、富竹や鷹野を殺す犯人がわからなければ・・・。」
露伴「そうだな。このままいけば5年目の祟りは起こるだろうな。」
羽入「あぅあぅ。それなのにこんな暇をしていていいのですか?」
露伴「これから入江に会うんだ。会ってみないとどうしようもないだろう。」
羽入「入江に会うのはわかっているのですが、それでどうするのですか?」
露伴「鷹野三四と接触できるようにしてもらう。鷹野三四が実質の診療所の長なんだろう?
   (鷹野のことは黙っていたが、鷹野三四と接触すること自体は隠せないしな。)」
羽入「鷹野から全てを調べるつもりなのですか?」
露伴「少なくとも、彼女がもっとも情報を持っているだろう。
   下っ端や実質研究員の入江より、危機管理者の鷹野三四に当たったほうがいい。
   鷹野に接触できたなら、天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使うつもりだ。
   入江は、どうしても話がつかないなら天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使わせてもらうか。」
羽入「わかったのです。それでは鷹野との接触に期待していますです。」
露伴「あぁ、まずは入江をうまく使わないといけないがな。
   そろそろグランドへ行くか・・・。」

31 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:39:05.25 ID:87786avZ0
露伴は図書館を出る、興宮小学校はすぐ近くだった。
小学校へと近づくと野球の球を打つような音や子供の声が聞こえてくる。
どうやら、練習は始まっているようだ。

露伴が学校の正門をくぐると、入江の姿はグラウンドの中にあった。
子供と共に練習に参加し、指導しているようだ。
露伴は入江に気づかれないようその様子を眺めていた。

やがて入江の指導も終わり、子供たちだけでの練習が始まる。
入江はベンチに座り子供たちを見ているようだった。
露伴は入江へと近づいていく。すると入江は露伴に気づいたようだ。

32 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:39:56.43 ID:87786avZ0
入江「おや、こんにちわ、露伴さんでよかったですよね?」
露伴「えぇ、こんにちわ。入江先生。」
入江「お名前を覚えていただけているとは光栄です。
   今日はどうなさったんですか?」
露伴「梨花ちゃんから聞いたんですよ。
   ぜひ野球の練習を見に来てほしいと入江先生が言っていたとか。」
入江「なるほど。本当に来て頂けるとは思っていませんでしたよ。
   沙都子ちゃんの件を聞きましてね。」
露伴「叔父のことですか?」
入江「えぇ。私も去年からあの叔父のことは知っていました。
   帰ってきたと聞いたときは・・・、どうしようかと思ったのですが。
   露伴さんが追い払ってくれたと聞きました。いったいどうやったんですか?」
露伴「あまり人様に誇れる方法じゃあないんですよ。
   叔父は麻雀を生業にしていたみたいなんで、麻雀でちょこっと懲らしめたんですよ。
   まぁ、そのあと殴りかかってきたんで実力行使した部分もありますが。」

そう言って露伴は苦笑いした。

33 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:42:17.43 ID:87786avZ0
入江「暴力を肯定するわけではありませんが・・・。
   あの叔父はかなり乱暴な人間です。
   正当防衛ということであれば、露伴さんが非を感じることはありませんよ。」
露伴「そう言ってくれるとうれしいですね。」
入江「私は沙都子ちゃんのことを本当に大切に思っています。
   未婚の私には無理だったんですが、養子として迎え叔父から沙都子ちゃんを救うことを考えたこともありました。
   結局、他人である私達にはもうどうすることもできなかった。そう考えていました。

   しかし、あなたは沙都子ちゃんを救ってくれた。
   あなたのとった方法が人として正しいのか、それは私にはわかりません。
   ですが、私は、入江京介は沙都子ちゃんを助けてくださった露伴さんに心から感謝しています。
   本当にありがとうございました。」
露伴「改まって言われると恥ずかしいですよ。僕は泊めてもらってる恩を返しただけなんです。」
入江「理由がなにであれ、あなたは沙都子ちゃんを救った。それが全てです。
   沙都子ちゃんもあなたが大好きなようです。うらやましいですよ。」

34 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:43:39.43 ID:87786avZ0
露伴「入江先生も長い付き合いなのではないんですか?」
入江「そうですね。沙都子ちゃんとは長ーい付き合いです。
   そもそも私と沙都子ちゃんにはご主人様とメイドという大切な関係があります。
   私達二人の間にはメイドさんの純白のエプロンのように清らかな絆があるんです。
   いくら露伴さんでも、私の沙都子ちゃんを奪うというなら容赦しませんからね。」
露伴「あ、ははは、そんなことしませんよ・・・。
   (この人も前原父と同じタイプのような気がする・・・。
   メイド喫茶にでも行ったら発狂するんじゃないか?)」
入江「露伴さんッ!!」
露伴「は、はい?」
入江「今あなたの目にとても美しい光景が映っていました。
   メイドさん達がたくさんいらっしゃるお洒落な喫茶店のような・・・。
   やはり露伴さんもメイドがお好きなんですね。いま目に映ったのはなんなんですか!?
   まさかそんな場所が実在しているんですか!?」

35 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:44:25.29 ID:87786avZ0
入江がすっかりメイドモードになり、しばらく付き合わされることになる。
露伴は雛見沢には変人が多いと思った。同人作家やらカレー狂やらメイド王やら。

そのメイド王の話もなんとか一区切りついたようだ。

入江「すみません、興奮してしまって。
   てっきり露伴さんもメイド仲間かと思いまして・・・。
   まぁ、お嫌いではないようで嬉しいです。」
露伴「ははは。まぁ、その話はまた今度にしましょう。」
入江「そうですね。私はあなたに沙都子ちゃんの件のお礼を言いたかっただけですから。」
露伴「それじゃあ、お礼ついでに僕のお願いを聞いてもらえませんか?」
入江「お願い・・・ですか。
   沙都子ちゃんの恩人に言われては断れませんね。
   私にできる範囲でしたら、どうぞおっしゃってください。」

36 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:45:18.33 ID:87786avZ0
露伴「いえ、大したことじゃあないんですよ。
   僕が雛見沢に来ている理由はご存知でしたっけ?」
入江「漫画の取材ですよね?この前お会いしたときに聞いた気がします。
   一応、富竹さんからも聞いています。オヤシロ様の祟りを調べているとか。」
露伴「えぇ、それでですね。診療所の鷹野三四さんというかたが雛見沢の風土に詳しいと聞いています。
   それで紹介していただきたかったんですよ。」
入江「そうですか。まぁ、そのくらいでしたら大丈夫ですよ。
   鷹野さんは人に雛見沢の風土について話すのが好きですからね。
   紹介すれば話してくれると思います。」
露伴「それではよろしくお願いします。できれば、早めにお願いしたいんですが大丈夫ですか?」
入江「いつごろがいいですか?鷹野さんに聞いておきますよ。」
露伴「実は綿流しのお祭りが終わったら、取材を終えて帰らないといけないんですよ。
   できるだけすぐがいいんですが・・・。」
入江「そうですか・・・。」

37 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 15:46:48.97 ID:87786avZ0
入江は少し考え込んだが、すぐに返答した。

入江「では、わかりました。明日の昼に診療所に来ていただけますか?
   お昼休みの間に鷹野さんを紹介しますよ。お昼休みは12時半から2時半までなので、その時間に来てください。」
露伴「入江先生、申し上げにくいんですが、雛見沢の人はお嫌いな話になるかもしれません。
   他の職員の方が祟りの話を耳にされると気分を悪くされると思います。できれば診療所の外でお会いしたいんですが。」
入江「えぇ、私も少しは鷹野さんから話を聞いているのでわかってますよ。
   他の方には聞こえないよう応接室をお貸ししますので、ご安心ください。」
露伴「そうですか。それでは明日の昼に伺いたいと思います。
   よろしくお願いします。」
入江「はい、お待ちしております。
   露伴さんにメイドの素晴らしさをお伝えする資料も準備しておきますので、覚悟してきてくださいね。」
露伴「ははは、それは遠慮したいですねぇ。」

一度固くなった雰囲気を入江が冗談で紛らわせてくれた。
そのあとも二人は村の子供たちについてなど雑談を続けた。
入江は本当によくできた人間だった。
診療所では鷹野がもっとも権限を持っているかもしれない。
だが、入江は人としても医者としても素晴らしく、雛見沢の診療所所長としてふさわしい人間だった。
露伴は彼をただの研究者扱いしたことを少し悪く思った。

54 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 17:12:13.21 ID:87786avZ0
日が落ち始め、入江が子供たちに練習を終わるように指示する。
露伴もそろそろ実行委員会の会合へと向かわなくてはならない。
入江にそれを伝えると、一緒に行くように誘われた。

入江は綿流し実行委員会の総務部で医療担当をしているそうだ。
ちなみに露伴はイベント部の出し物に参加することになる。
自転車も車に積んでくれるそうなので、露伴は入江の厚意に甘えることにした。

55 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 17:13:43.05 ID:87786avZ0
綿流し実行委員会の会合は、古手神社の境内にある集会所で行われる。
露伴と入江が着いたときには、すでに何人かの村人が中に入っていた。
集会所の中で入江と話をしながら待っていると、圭一が入ったきた。

圭一「あ、露伴さーん。こんちわっす。あれ、そちらの方は?」
入江「前原さんですよね?入江と言います。はじめまして。
   入江診療所の所長をやっています。よろしくお願いします。」
露伴「圭一君は病院に行くことはなさそうだからなぁ。」
圭一「へへッ。まぁ、体だけは丈夫っすからね。」
露伴「いやいや、なんとかは風邪ひかないってやつだよ。」
圭一「露伴さん、それはひどいですよ!学校じゃあ一番勉強できるんですよ?」
露伴「そうなのかい?意外だねぇ。ふふふ。」
圭一「あー、もう絶対信じてないなぁ。」
梨花「露伴の頭がよすぎるのです。しょうがないのですよ。」

いつの間にか梨花が現れ、圭一の頭を撫でていた。
そのまま梨花も混ぜ雑談になる。露伴たちは会合が始まるまでそうしていた。
ちなみに圭一は露伴の出し物の司会をするため、今日の会合に来たらしい。
梨花はもともと奉納演舞があるので、会合には毎回参加していたそうだ。

56 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 17:14:58.21 ID:87786avZ0
会合の時間になったため、公由村長がはじまりの挨拶をする。
魅音が用事があったため遅れて来るそうだ。
そのため、露伴と圭一に自己紹介を求める。

露伴も圭一も無難な挨拶を済ませたところで魅音が到着した。
その後はいろいろと決めることがあるらしく、各部に分かれて話し合いをする。
露伴と圭一は新参なので何もわからなかったが、村人がいろいろと必要なことは教えてくれた。

会合も終わりになり、公由のだらしない締めの挨拶の後、解散となる。
魅音はまだ決めることがあると言うので、圭一と入江は帰ることにする。
露伴も彼らを神社の階段の下まで送ると、沙都子の待つ家へと帰ることにした。

57 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 17:15:53.29 ID:87786avZ0
露伴が階段を登り、集会所の前を通ると魅音に呼び止められた。

魅音「露伴さん、ちょっといい?」
露伴「うん?何か決めることでもあるのかい?」
魅音「ううん、会合はもう終わりだよ、ちょっと。」

そう言って、魅音は露伴を呼び寄せる仕草をする。
露伴は人前では話せない話なのだと気づき、魅音についていく。
そのまま神社の境内裏の人気のない場所へと二人は歩いていった。

露伴「このへんでいいんじゃあないか?」
魅音「うん。そうだね。」
露伴「で、何の用だい?」

58 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 17:16:39.39 ID:87786avZ0
魅音「露伴さん、ここからは友人の園崎魅音じゃない。
   園崎家頭首代行園崎魅音として話をさせてもらうよ。」

魅音がそういうと、魅音の目つきがかわる。
いままで露伴に見せたことのない鋭い目つきだった。

露伴「わかった。話を聞こう。」
魅音「園崎家頭首お魎がお会いしたいと言っています。
   このあと、本家のほうにお越しにになって頂けますね?」

魅音の口調は強いものだった。
そこには、露伴の意思は関係なく強制的に本家へと連れて行く意思が込められていた。
露伴もそれを感じ取る。

60 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 17:19:23.09 ID:87786avZ0
露伴「わかったよ。でも、夕食がまだなんだ。
   沙都子ちゃんが用意してくれてると思う。
   夕食の後に伺うんでいいかい?」
魅音「・・・。
   わかりました。私が本家に戻り次第、迎えの車を寄こします。
   階段のところで待たせておきますので、お乗りください。」
露伴「あぁ・・・。
   で、頭首様は何の用なんだい?」
魅音「本家で頭首本人からお聞きください。
   私からの用件は済みましたので、失礼します。」

それだけを伝えると、用件を終えた魅音は硬い表情のまま立ち去った。
羽入が何事かと騒ぎ立てていたが、露伴は無視して家へと戻る。
流石の露伴もまだ何が起きているのかはわかっていなかった。

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