81 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 19:28:35.59 ID:87786avZ0
露伴は余計なことを言うなと羽入に忠告した後、家へと戻った。
すでに梨花と沙都子が夕食の準備を済ませ、露伴を待っていた。

沙都子「露伴さん、遅いですわよ。何をやってたんですの?」
露伴「あぁ、すまない。ちょっと魅音ちゃんに呼ばれてね。
   このあとお酒の席に呼ばれたから、夕飯を食べたら園崎家に行くことになった。」
沙都子「あら、そうでしたの。大人の方はお付き合いが大変ですわね。」
露伴「まぁ、そういうわけだから、食べたら出かけるよ。」

露伴は特に何もなかったかのように振る舞い、食事を終える。
沙都子に鍵はポストに入れておくから帰ってきたら自分で開けるように言われた。
夜の間に帰ってこれるのかはわからないので、園崎家に泊まってくるかもしれないと伝えておいた。

82 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 19:29:23.12 ID:87786avZ0
露伴が境内を抜け階段を降りると黒塗りのリムジンが1台止まっていた。
中から男たちがぞろぞろと出てくる。その中の髭面の男が話しかけてきた。

??「岸辺露伴さんですね?」
露伴「あぁ。そういえば詩音ちゃんのアパートで見かけた人かな?」
??「はい、葛西と言います。
   園崎家までお送りしますのでお乗りください。」
露伴「ご苦労様。」

露伴はそう言うと、葛西の案内通りに車に乗せられる。
後部座席で2人の男に挟まれて乗る形になった。
よほど露伴を逃がしたくないようだ。


83 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 19:30:22.34 ID:87786avZ0
車内では会話をすることもなく、園崎家へと着いた。
立派な門の前に案内される。門には園崎と書かれた表札がかかっていた。

葛西が呼び鈴を押した。ビーーー。ビーーー。
呼び鈴とはインターホンではない。相手からの返答はない。
露伴たちはしばらく門の外で待つことになる。

やがて、中から人が歩く音が聞こえる。砂利を踏みしめる音が。
そして閂がゴトリと重い音を立て、扉が開いた。
扉を開けたのは魅音だった。

魅音「葛西さん、ご苦労様です。」
葛西「いえ。」
魅音「さぁ、露伴さん、お入りください。
   ご案内申し上げます、どうぞこちらへ。」

魅音は礼儀正しく頭を下げる。
露伴は今の魅音が園崎家頭首代行であることを理解した。

85 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 19:32:04.61 ID:87786avZ0
露伴「お邪魔いたします。」

露伴は一言だけ答え、魅音に付いていく。
暗くてよく見えなかったが、広い庭を通りぬけ、母屋へと案内された。
葛西達も母屋まで案内された後、玄関からは自分達でどこかの部屋へと向かって行った。

そのままとある部屋の前まで案内される。
露伴はその部屋にお魎がいるものだと思っていた。

魅音「こちらに露伴さんにお会いしたいという方達がいます。
   頭首も彼女達との面会を許されました。
   20分ほどしたら使いを寄こしますので、頭首の部屋にいらしてください。」

魅音はそれだけ告げ、頭を下げると廊下の奥へと消えていった。
露伴はどうすることもできず、障子を開け、案内された部屋へと入ることにした。


障子を開けると、露伴の知る二人の顔が飛び込んでくる。
露伴は冷静を装い、部屋に入り障子を閉めた。

部屋にいたのは、レナと詩音だった。

93 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 20:35:42.81 ID:87786avZ0
レナと詩音は露伴が入ってきたときから俯いていた。
露伴が用意されていた、自分のためであろう座布団へと座る。
それでも彼女達は口を開けなかった。
露伴は少し考えた後、最初の言葉を発した。

露伴「君達が一緒にいたのは驚いたが、大体何があったかわかったよ。」

露伴がそう言うと、二人は互いの顔を見合わせる。
詩音はすぐにまた俯いたが、レナは露伴の顔を見て話し始めた。

レナ「露伴さんは察しがいいからわかっているかもしれないけど、
   露伴さんがここに呼ばれたのはレナ達のせいなんだ。ごめんね。」
露伴「いや、レナちゃんがここまでやるとはね。ふふふ。
   僕の想像以上だったよ。」
レナ「あはは、やっぱりお見通しだね。だね。」

露伴が言った言葉は的確だったらしく、レナは乾いた笑いをしてみせる。
だが、それも続かない。レナはため息をついたあと、覚悟を決めたようだった。

94 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 20:36:52.82 ID:87786avZ0
レナ「あのね、露伴さん。私、露伴さんの言うとおりにしたの。
   魅ぃちゃんに相談してお父さんと話し合った。」
露伴「あぁ、学校を休んだと聞いたから、そうじゃないかと思ったよ。」
レナ「レナのことはね、解決したんだよ。
   それで今度はねレナが魅ぃちゃんの悩みを解決してあげようと思ったの。」
露伴「魅音ちゃんと詩音ちゃんの仲を取り持とうとしたわけだ。
   そこまでは僕の読みどおりなんだが・・・。」
レナ「あはは。余計なことしちゃったかな・・・。かな・・・。」
露伴「うーん、間違ったことはしてないんじゃないかい?
   僕としてはちょっと困るけどもね。」
詩音「私が余計なことを言ったんです・・・。」
露伴「君の悩みは解決したのかよ?」
詩音「レナさんが、鬼婆にいろいろ言ってくれて・・・。
   でも、その上で私が露伴さんの話をしちゃって・・・。」
露伴「悩みが解決したなら、余計なことじゃあないだろ。
   あまり気にするなよ。」
詩音「でも、鬼婆は露伴さんが祟りに関わってると思ってます・・・。」
露伴「ふふふ。大丈夫だよ。僕がやられると思うのかい?
   まぁ、一応詳しい話だけしてくれよ。」

95 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 20:38:08.50 ID:87786avZ0
露伴には魅音と詩音の仲を改善し、発症を防ごうという考えがあった。
そのため、先日レナに詩音のことをさりげなく伝えていた。
しかし、レナが園崎家まで巻き込んで二人の関係を改善することは読めなかったようだ。

何があったのかを簡潔に書こう。
レナは魅音に父の相談をし、翌日に父との話し合いをした。
父の問題が解決したレナは、魅音と詩音の関係について魅音から聞き出す。
そして、魅音と詩音の関係だけでなく、詩音と園崎家の関係も修復しようとしたのだ。
レナは露伴の予想以上の結果をだし、詩音と園崎家の関係を修復する。
だが、その際に詩音から露伴の情報が園崎家に伝わってしまった。
これがここ2日間、露伴の知らない間に起きていたことだ。

園崎家にとって、オヤシロさまの祟りはマイナスでしかない。
村のイメージとしても、自分達と警察の関係にしても快く思っていなかった。
もし露伴が真相を知っているなら、それを聞き出す必要がある。
そして5年目の祟りが起こるなら、それを阻止したい。
園崎家の考えはそんなところだった。

96 名前: ◆rp2eoCmTnc [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 20:41:45.35 ID:87786avZ0
大方のあらすじを話し終えると、二人はまた俯き謝り続けていた。
どうやら園崎家は露伴に何をしてでも真相を聞き出すつもりのようだ。
そのため、二人は責任を感じここで露伴を待っていたらしい。

露伴「ほら、もういいって。
   この岸辺露伴がヤクザくらいにどうにかされると思うのかい?
   ふふふ。心配するなよ。」

露伴が二人に強がっていると、廊下を誰かが歩いてくる音が聞こえてきた。
どうやら、お迎えがきたようだ。

露伴「じゃあ、僕は行ってくるよ。
   二人は、もう遅いから帰りなよ。」

二人が何と返事をしていいかわからず困っていると、露伴は部屋から出て行ってしまった。

露伴は迎えに来た葛西に案内され、奥の部屋へと向かう。
何人もの人間の気配がする障子の前まで案内された。
どうやらお魎だけというわけではないようだ。
露伴が覚悟を決め、頷くと葛西が障子を開けた。

139 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:47:10.33 ID:87786avZ0
部屋の中にはかなりの人数がいた。
布団に入ったまま体を起こす老婆が中心に居座る。
魅音の母だろうか。緑髪の美しい着物姿の女性が老婆の真横に座っている。
そしてそこから老婆を囲むように数人の男と魅音が座っていた。
部屋の端にも何人かの男が座り控えている。

その圧倒的な光景に露伴は立ち尽くした。

葛西は一礼をしたあと部屋の端に座る男達のもっとも上座に座った。
おそらく、彼らはお魎を守るためにいるボディーガードのようなものだろう。
魅音が座る位置を考えると、老婆の周りに座る男たちは園崎家の権力者だと考えられる。

露伴は状況を認識し終えると、心を落ち着け、部屋に入ることにした。

140 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:48:16.19 ID:87786avZ0
部屋に入ると、露伴は障子を閉め。
老婆の正面に正座した。そして口を開く。

露伴「初めまして。岸辺露伴と申します。雛見沢へは数日前より訪れております。
   園崎家党首お魎さんへのご挨拶が遅れて申し訳ございません。」

露伴はそう言うと、両手を付き、深々と頭を下げた。

??「おやおや、礼儀正しいお人だねぇ。
   ねぇ、母さん?」
老婆「頭をあげぇ。」

老婆が一言だけ声を発すると、露伴は頭をあげた。
老婆は露伴をにらみ付けている。

老婆の目は俗に言う"鷹の目"。園崎家党首が持つ圧倒的な風格を漂わせる鋭い目だった。
そしてその横に控える女性もまた、同じ"鷹の目"で露伴を見据えていた。

141 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:49:35.81 ID:87786avZ0
しかし、露伴も負けてはいない。
露伴は一度目をすっと閉じると、ゆっくりと目を開け、老婆に限らず親族達を見渡した。
その露伴の睨みに親族の男達は顔を背けた。"鷹の目"を持つはずの魅音もその顔を背ける。

スタンド使いとしてこれまで幾度と死線を潜り抜けてきた露伴の目。その風格。
それはもはや、人間の目ではなくなっていた。いや、人間どころか動物ですらない。
異形の者の目となった露伴の睨みに、ヤクザの大幹部である親族すらも目を合わせることはできなかった。

露伴を睨み返すことができたのは、老婆とその横の女性のみ。
研ぎ澄まされた"鷹の目"を持つ二人だけが、露伴を見据えることができた。
露伴はそれを見て、この二人が今日の場でもっとも力を持つ二人だと認識した。
そのうちの一人である女性が口を開く。

??「そんなに怖い顔で睨まないでおくれよ。ふふふ。」

それを聞き、老婆も口元をニヤリと歪ませている。
露伴はその言葉を受け、睨みをやめた。

144 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:51:45.77 ID:87786avZ0
??「もうお分かりだとおもうけど、こちらが園崎家党首お魎。
   私はその娘、園崎茜。本来は魅音が取次ぎをするんだけど、アンタとは"友達"らしいからね。
   私が取次ぎをさせてもらうよ。」
露伴「魅音ちゃんにお世話になっております。
   よろしくお願いします。」

露伴は軽く一礼した。
その様子を見て茜はくすくすと笑う。
おそらく露伴が普段こんなに礼儀正しい人物ではないのに感づいているのだろう。

茜「それじゃあ、とっとと本題に入ろうかねぇ。
  レナちゃんと詩音から大体の話は聞いてるかい?」
露伴「成り行き程度でしたら。」
茜「そりゃあ話が早いね。アンタ、オヤシロ様の祟りについて何か知ってるんだろ?
  それを話してほしいってことさ。」
露伴「オヤシロ様の祟り・・・ですか。」
茜「アンタがやばい話を知ってるっていうのは、詩音に聞いてるよ。
  アンタを警察に突き出したりはしないがね、ここまで来てもらったからには全部話してもらうよ。
  黙ってれば帰してもらえるなんて甘いことは考えないことさね。」
露伴「・・・。」

145 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:52:46.77 ID:87786avZ0
露伴はしばらく黙りこんでしまう。
親類も言葉を発しないため、沈黙が続く。
その沈黙をお魎が破った。

お魎「だぁっとらんで、とっとと喋らんかぃな。
   帰ぇさねだけでねぐ、生きても帰ぇれんかもしれんよ?」

しかし、それでも露伴は喋らない。
お魎は気が長いほうではないらしい。
露伴がすぐに返答をしないと見て、怒鳴り散らす。

お魎「だぁっとったらわからんちゅうんじゃあああ!!
   こん餓鬼ゃ、だあが口聞いとんかわかっとらんかぁぁあああ!?」

お魎の罵声を浴び、やっと露伴は口を開ける。

露伴「申し訳ありません。これだけの人の前ではとても喋ることはできません。」

146 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:54:10.60 ID:87786avZ0
露伴がそう答えると、お魎は茜の耳元になにやら囁いた。
すると茜が葛西に目配せをする。葛西はうなずき、部屋から出て行く。
他の男達もそれに続いて出て行った。
部屋には園崎家の親族だけが残る形となる。

茜「これで満足かい?露伴さん。」
露伴「いえ、お魎さんと二人だけで話をさせて頂きたい。」

露伴はそう言うと、再び両手を畳につけ、先ほどよりもさらに深く頭を下げる。
そしてそのまま頭を上げることはない。
もはやこれは土下座しているのと変わらなかった。

茜「それは無理な相談ってもんだよ。
  頭首とどこの馬の骨かもわからないあんたを二人にできるとお思いかい?」
露伴「ですから、こうして頼んでいます。」
茜「駄目なもんは駄目だよ。頭をお上げ。」

148 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:56:42.58 ID:87786avZ0
茜が促すが、露伴は頭を上げない。誰も喋らないまま数分が過ぎる。
もうどれだけ時間がたっただろうかと露伴が考えていると、誰かの足音がした。

その誰かは露伴に近づいてくる、そして近くに正座した。

魅音「婆っちゃ。露伴さんは私の友達だ。
   絶対に婆っちゃと二人っきりになっても危害を加えたりしない。
   どうかこの通りだから、露伴さんの話を聞いてあげてよ。」

魅音はそう言うと、露伴と同じように深々と頭を下げた。

親族は魅音の行為に動揺したのか、ヒソヒソと何か話し合っている。
その会話を遮るように茜が言う。

茜「魅音。仮にも園崎の頭首代行がそんなに簡単に頭を下げるんじゃないよ。
  それに、この世の中に絶対なんてものはないさね。
  もし、万が一が起こったらどうするんだい?」
魅音「私がケジメをつけます。」

149 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:58:03.98 ID:87786avZ0
茜「『頭首』に万が一のことがあったら、そのケジメをつけると。
  その意味がわかって言ってるんだね?」

茜が『頭首』という言葉を強調する。
しかし、魅音は怯まなかった。

魅音「はい。露伴さんは私の友達です。
   絶対にそんなことは起こりません。
   ですから、どんなケジメでも私は受け入れます。」

茜は魅音からすぐに返答が返ってくると思わなかったようで少し驚いた顔をする。
そしてお魎と何かヒソヒソと話をした。
その話が終わると、茜は立ち上がり、その場の親族全体に向かって言った。

茜「今日はもう頭首はお休みになられる。
  魅音、露伴さんを客間に案内して布団を用意しな。
  皆様方も今日はもうお帰りになるか、お休みになるように。」

150 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 22:59:00.04 ID:87786avZ0
茜のその言葉を受け、親族達はぞろぞろと部屋を後にする。
皆、お魎に一言挨拶をすると出て行った。

親族が出て行っても、魅音と露伴は頭を下げたままだった。
それを茜が一喝する。

茜「魅音ッ!聞こえなかったのかい!!
  さっさと露伴さんを案内しな!!」

茜の剣幕に押され、魅音は頭を上げたようだ。
そして露伴に客間へ行くよう声を掛ける。

露伴は魅音の顔を立てるために頭を上げ、お魎に一礼してから部屋を後にするのだった。

152 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/12(土) 23:01:01.39 ID:87786avZ0
魅音「露伴さん、ごめんね。
   私も露伴さんの味方になりたいんだけど・・・。」
露伴「ふふふ。気にするなよ。
   あぁいうお年寄りとヤクザには筋を通しといたほうがいいのさ。」
魅音「それじゃあ、露伴さん頭下げたのも全部演技ってわけ?」
露伴「ふふふ。僕を誰だと思ってるんだい?
   この岸辺露伴。死ぬまで誰にも屈服はしないよ、心はね。
   あんな表面上のことで話を聞いてくれるなら安いもんさ。」
魅音「あはは・・・。聞いてくれると・・・いいんだけどね。」
露伴「気にするなよ、自分で蒔いた種だからね。
   自分でなんとかするよ。」
魅音「露伴さん、いろいろありがとうね・・・。詩音のこと・・・。」
露伴「レナちゃんに礼を言うんだな。僕は何もしてない。」
魅音「うん・・・ありがとう・・・。」
露伴「・・・。」

客間に案内された露伴は布団を出してもらう。
魅音に礼を言うと、すぐに布団に入った。

羽入が何か騒いでいるが、関係ない。
流石に疲れた露伴はそのまま眠るのだった。


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