210 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 01:40:23.89 ID:YF7VRS8H0
  1983年(昭和58年)
       6月17日(金)

----入江診療所----

入江「おかしいですね・・・。」
鷹野「入江先生、いつ来るんですか?お客様は。」
入江「もう来てもおかしくない時間なんですが・・・。」

すでに時間は2時近くになっていた。
午前の診療が終わってから拘束され続けている鷹野はだいぶ機嫌が悪かった。
さっきから入江に文句を言い続けている。なんとか入江は彼女をなだめる。
しかし、入江の努力が報われることはなかった。
その日、露伴が診療所へ来ることはなかった。

211 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 01:41:11.47 ID:YF7VRS8H0
----古手神社防災倉庫の2階(梨花達の家)----

夜、電話を掛ける沙都子の姿があった。

とおるるるる とおるるるるる ぶっ
??「はい、もしもし。園崎ですけれど。」
沙都子「も・・・もしもし・・・。」
??「どちらさまですか?」
沙都子「・・・。
    ほ・・・、北条です・・・北条沙都子ですわ・・・。」
??「おやおや、沙都子ちゃんかい。こんばんわ。
   魅音の母の茜だよ。わかるかい?」
沙都子は相手が茜だと知り、安心する。
茜と面識があるわけではないが、電話の対応は優しい感じがした。
なにより、鬼婆やお手伝いの人間に出られるよりはましだった。

213 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 01:42:06.51 ID:YF7VRS8H0
沙都子「茜さんですわね。こんばんわ。
    昨日の夜そちらにお伺いした露伴さんは知ってますかしら?」
茜「あぁ、漫画家の兄ちゃんね。その露伴さんがどうしたんだい?」
沙都子「その露伴さんがまだ家に帰ってこないんですわ。
    そちらにはお邪魔してませんこと?」
茜「・・・。
  いや、昨日の夜は泊まってたけど、今はうちにはいないねぇ。」
沙都子「そうですか、ご迷惑をおかけしましたわ。ありがとうございました。」
茜「いーえ、お役に立てなくてごめんよ。」
沙都子「いえいえ、それでは失礼しますわ。」

沙都子はそう言って受話器を置いた。

その後、梨花に相談するが、1日帰ってこないくらい様子を見ろといわれる。
沙都子は不安な気持ちを持ったまま床に就くのだった。

242 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 02:33:41.82 ID:YF7VRS8H0
  1983年(昭和58年)
       6月18日(土)

----通学路----

圭一は朝から違和感を感じていた。
レナも魅音も昨日からどことなく元気がなかった。
魅音は祭りの準備で疲れているのだろう。
レナも話しかければ元気に振舞うので何か疲れているだけかもしれない。
鈍感な圭一はそう考え、気にしないことにする。
登校中、圭一は彼女らを元気にさせるため、一人ではしゃぎながら明日の祭りについて語っていた。

学校に着くと教室の雰囲気もいつもとは違っていた。この日は土曜日。授業は午前中だけだ。
次の日に綿流しのお祭りがあるということもあり、今日の子供達はいつになく元気だった。
友達と明日の約束をしたり、このあと何をして遊ぼうか話したり、そんな明るい雰囲気で教室はいっぱいだった。

243 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 02:34:46.03 ID:YF7VRS8H0
しかし、その中に一人、元気のない少女を見つける。

自分の机にひじを突いて突っ伏している。
目開いているから寝ているわけではなさそうだが、
机の上の何もないところをじっと見つめていた。

圭一は気になり話しかけた。

圭一「おい、沙都子、目ぇ開けたまま寝てんのか?」
沙都子「・・・。」
圭一「おーい、無視することはないだろ?」
沙都子「余計なお世話ですわ・・・。放って置いてくださいまし。」

圭一はムっとする。いつもならイタズラを仕掛けてやるところだ。
しかし、今日の圭一はいつになく冷静だった。

沙都子は最近ものすごく機嫌がよかった。
露伴が雛見沢に来てから、沙都子が機嫌が悪い日など一度もなかったのだ。
その沙都子が急に元気がなくなった。なにかあったのだろうか。

245 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 02:35:41.84 ID:YF7VRS8H0
圭一「沙都子、本当に大丈夫かよ?
   何かあったのか?」
沙都子「・・・。」
圭一「沙都子・・・ここで話づらいなら外へ行こうぜ。
   俺でよければなんでも相談に乗るからよ。」
沙都子「・・・。」

沙都子は圭一の目を一度見たあと、なにも言わずに教室を出て行った。
圭一もそれに続いて出て行く。さらにそれに気づいたレナも教室を出て行くのだった。

レナ「圭一くんッ!沙都子ちゃんッ!」
圭一「お、レナ・・・。」
レナ「私も聞きに行ってもいいかな?かな?」
沙都子「・・・。」

沙都子は何も言わずに校舎の裏手まで行く。
圭一とレナも何も言わずに付いて来た。

圭一「おい、沙都子、何があったんだよ?」
レナ「沙都子ちゃん、私と圭一くんに話してみて?
   絶対に力になるよ?」
沙都子「・・・ぅ・・・うぅ・・・ふわああぁぁぁーん。」

246 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 02:36:42.96 ID:YF7VRS8H0
沙都子がいきなり泣き出し、レナに飛びつく。
レナは沙都子を抱きしめ、なんとかなだめる。

沙都子「露伴さんが・・・露伴さんがぁぁぁあああ・・・。」
圭一「露伴さんに何かあったのかッ!」
レナ「・・・。」

二人は沙都子が泣き止むのを待ち、沙都子から話を聞いた。

沙都子が言うには、露伴は木曜日の夜に園崎家へ向かった。
酒の席に招待されたと言っていたらしい。
たしかに園崎家ではたまに宴会があると魅音が言っていることがあった。

露伴さんは酔って泊まってくるかもしれないと伝言を残していたので、
翌朝に帰ってきていなくとも沙都子達は気にしなかった。
しかし、その日の夜になっても露伴さんが帰ってくることはなかった。
園崎家に電話したところ魅音の母に、朝まで家にいたが今はいないと言われたらしい。

圭一「露伴さんが・・・いなくなったってことか・・・。」
レナ「・・・。」

そのとき、校長の鳴らす鐘の音が聞こえる。
3人は急いで教室へと戻るのだった。

268 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 03:32:04.01 ID:YF7VRS8H0
1時間目の授業が終わり、休み時間になる。
圭一は誰とも話をする気にならなかった。

露伴さんはどうしたのだろうか。
露伴さんが沙都子に何も言わずに村からいなくなるわけがない。
それに、綿流しの出し物だって、俺と一緒にやるはずなんだ。
露伴さんが村からいなくなるなんてことは考えられない・・・。
いろいろと考えをめぐらせていると、レナが机の前にいた。

レナ「考え事かな?圭一くん。」

レナの能天気な問いに、圭一は文句を言いたくなった。
しかし、レナの手元を見てその文句を飲み込む。

269 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 03:33:20.99 ID:YF7VRS8H0
レナはなにやら折りたたんだ紙を机の上に置き、圭一のほうへと差し出してきた。
まるで、授業中に先生に見つからないように会話をするための手紙みたいだ。
圭一はレナの意図を理解し、手紙を受け取る。そして何もないように答えた。

圭一「いやー、明日祭りだろー?
   小遣いが残り少ないからさ、何を食べようかなーなんてよ。」
レナ「あはは、縁日の屋台は何でも高いからね。
   でも、どうしても買っちゃうんだよねー。」

そのままレナと他愛ない話をし、休み時間を終える。
圭一は、2時間目の授業が始まってからレナの手紙をそっと開いた。

『露伴さんのことで話したいことがある。
 放課後に残って。魅ぃちゃんには内緒にね。』

圭一は手紙を読むと、クシャクシャに丸めてポケットへと放り込んだ。

270 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 03:34:18.71 ID:YF7VRS8H0
授業が終わり、子供達はぞくぞくと帰っていく。
お昼も家で食べなくてはいけないし、土曜の午後は遊びたいのだろう。
レナと圭一は魅音に帰りを誘われたが、少し学校で遊んでいくと答えた。
魅音は綿流しの祭りの準備があるため、先に帰ると言い帰っていく。
教室にはレナと圭一のふたりだけが残った。

圭一「レナ・・・もう誰もいないし話してくれよ。」
レナ「うん・・・。
   あのね、露伴さんが木曜日に魅ぃちゃんの家に行ったのはお酒のためじゃないの。」
圭一「どういうことだ?露伴さんが嘘をついてるってことか?」
レナ「多分・・・沙都子ちゃんに心配させたくなかったんだと思う。
   露伴さんが魅ぃちゃんの家に行ったのは、魅ぃちゃんのおばあちゃんに呼ばれたからなの。」
圭一「魅音のばーさん・・・?」
レナ「魅ぃちゃんの家が雛見沢で一番大きな家なのは知ってるでしょう?」
圭一「あぁ。」

271 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 03:36:06.33 ID:YF7VRS8H0
レナ「露伴さんはね、オヤシロ様の祟りについて何か知っていることがあるみたいなの。」
圭一「お、俺も聞いたことあるぞ。ダム工事現場の監督が殺されたって。
   他にもあるみたいなことも言ってたけど・・・。」
レナ「オヤシロ様の祟りっていうのはね、毎年綿流しの夜に誰かが死に、誰かが鬼隠しにあうんだよ。
   その事件は最初のオヤシロ様の祟り。そのあと毎年起きつづけて、今年で5年目になるの。」
圭一「鬼隠し?神隠しみたいなもんか?」
レナ「うん、そんなところだよ。
   園崎家は村のマイナスイメージだった祟りをなんとかなくしたいと思ってる。
   それで、露伴さんが何かを知っているとわかって、露伴さんを呼び出したの。」
圭一「なるほどな。でも、なんでレナはそんなこと知ってるんだ?」
レナ「・・・あのね・・・、露伴さんのことを園崎家が知ったのは私のせいなの・・・。」

レナは圭一に自分の知ることを話す。
魅音のことも詩音のことも、あの夜露伴と会っていたこともすべて話した。

272 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 03:37:12.88 ID:YF7VRS8H0
圭一「なるほどな。それで、レナは露伴さんはどこにいると思うんだよ。」
レナ「私は、まだ露伴さんは園崎本家にいると思う・・・。」
圭一「魅音のお母さんは嘘をついてる?」
レナ「うん・・・魅ぃちゃんのお母さんは普段は興宮に住んでるの。
   魅ぃちゃんの家には、おばあちゃんとお手伝いさん、それに魅ぃちゃんしか普段はいないんだよ。
   私が露伴さんと会った日も、昼間はおばあちゃんしかいなかった。
   露伴さんから話を聞くために親族を集めることになって、
   それで、魅ぃちゃんのお母さんはわざわざ興宮から後で来たんだよ。」
圭一「なるほど・・・、つまり普段いないはずの魅音の母さんがまだ本家にいたってことは、
   露伴さんも本家にいるってことか・・・。」
レナ「うん・・・。少なくとも、何か知っていると思う。」
圭一「魅音に話を聞こう・・・。」
レナ「魅ぃちゃんは、園崎家の人間だよ。
   露伴さんを呼び出した時も、頭首代行として話を聞いてるはず・・・。
   私達の味方になってくれるかはわからないよ・・・。」

278 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 03:39:45.34 ID:YF7VRS8H0
レナがそう言い、俯くと圭一はレナの頭をぐしゃぐしゃと撫でてやる。

レナ「はぅぅ・・・。」
圭一「馬鹿野郎。魅音は俺達の仲間だろ。
   きっと味方になってくれるよ。」
レナ「う・・・うん・・・。
   あと、詩ぃちゃんも何か助けてくれるかもしれない。
   露伴さんのことは私と詩ぃちゃんのせいだから・・・。」
圭一「よし、まずは詩音が先だな。
   魅音は立場上俺達の味方になっても、できることが限られるだろう。
   まずは詩音から話を聞いて作戦を考えるんだ。」

レナと圭一は互いに見つめあい、頷きあう。
二人が決意を固めたそのとき、教室の扉が開かれた。

283 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 03:42:26.97 ID:YF7VRS8H0
沙都子「おーっほっほっほッ!!
    私を忘れてもらっては困りますわねぇ。」
圭一「さ、沙都子ッ!?」
レナ「沙都子ちゃん、聞いてたのかな?かな?」
沙都子「最初から最後まで聞かせてもらいましたわ。
    私もお供しますわよー。」
レナ「沙都子ちゃん、危ないよ。ただでさえ沙都子ちゃんは園崎家には・・・」
圭一「レナッ!」

圭一がレナの言葉を制す。そして沙都子に近づき話しかけた。

圭一「沙都子も露伴さんを助けたいか?」
沙都子「えぇ、露伴さんは私の命の恩人ですわ。」
圭一「何があっても、後悔しないな?ただじゃすまないかもしれないぜ?」
沙都子「望むところですわ!露伴さんは私の大切な友人ですもの。
    露伴さんは私の為に戦ってくださいました。私も露伴さんの為に戦いますわ!!」
圭一「ぃよーし!気に入ったぜ沙都子!!おまえも付いて来い!!」

こうして圭一たちは露伴を救出する為に動き出す。
幸い、詩音の電話番号はレナが聞いていたため、すぐに連絡が取れる。
詩音と連絡をとるため、まずは前原家へと3人は学校から飛び出していくのだった。

375 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 14:31:58.25 ID:YF7VRS8H0
3人は前原家へと着くとすぐに詩音に電話をかけた。
レナが電話で話したところ、露伴絡みだと知りすぐに来てくれる事になる。
集合場所は前原屋敷。つまり、詩音はここに直接合流してくれることになった。

時間に余裕のできた3人は圭一の母の料理をご馳走になる。
圭一の母は娘ができたようで嬉しいと騒いでいた。
3人は昼を食べ終えると、圭一の部屋へと移動した。

圭一「おふくろがうるさくてごめんな。」
沙都子「あら、元気そうでいいお母様でしたわよ。」
レナ「そうだね、圭一くんのお母さんはいい人だよ。」
圭一「あー、ところで沙都子。梨花ちゃんはどうした?」
沙都子「梨花は先に家に帰りましたわ。今日もお祭りの打ち合わせがあるそうですから。」

ピンポーンッ

376 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 14:32:47.55 ID:YF7VRS8H0
圭一「おっと、詩音か?ちょっと出てくる。」

そう言って圭一は階段を降りて行った。
玄関に行くと、母が詩音に応対していた。

圭一「よぉ、詩音、とりあえず俺の部屋に来てくれ。」
詩音「お邪魔しますね、おば様。」

息子が急に女の子を3人も連れてきたものだから、母は興味津々のようだった。
そんな母を無視して圭一と詩音は2階の圭一の部屋へと上がって行った。

詩音「はーろろん。」
レナ「あ、詩ぃちゃん。はやかったねー。はーろろん。」
沙都子「はろろん?でございますわぁ。」
詩音「あ、沙都子に(詩音として)会うのは初めてですね。
   魅音の双子の妹の詩音です。よろしくね。」

377 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 14:33:40.14 ID:YF7VRS8H0
沙都子「よろしくお願いしますわ。
    兄から詩音さんのことは聞いていましてよ。」
詩音「悟史くんから・・・?」
沙都子「えぇ、兄がとてもいい方だと言ってましたわ。」
詩音「そっか・・・。あはは。」

詩音は嬉しそうに笑うと沙都子をぎゅっと抱きしめた。
沙都子は一瞬抵抗しようかと思ったが、彼女の微笑は優しかった。
悟史の微笑みのように優しかった。だから抵抗することをやめた。

詩音「(沙都子・・・ごめんね・・・今までごめんね・・・。
   悟史くんに任されたんだ・・・沙都子のこと・・・。)」
圭一「おいおい、じゃれあってる暇はないぜ。
   露伴さんをさっさと助けださねーとな。」

そう圭一に言われ、詩音も頷く。
もう全員の決意は固まっているようだ。

378 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 14:35:11.33 ID:YF7VRS8H0
詩音「いまの状況をお願いします。
   私もレナさんと一緒に露伴さんに会った日から、本家には出入りしてません。」

沙都子が露伴が行方不明であることを、そしてレナが自分の推理を聞かせる。

詩音「そうですね。私もレナさんの意見に同意です。
   お母さんが本家にいるのもおかしいですし、私の忠臣の葛西も本家に行きっぱなしなんですよね。
   夜は部屋に戻ってくるんですが、なにも喋ってくれません。露伴さんは本家にいると思っていいです。」
圭一「よし、ならそれをどうやって助けるかだな。」
詩音「ただ、ひとつ気になることがあります。」
圭一「うん?なんだよ。」
詩音「お母さんは、多分嘘をついてないと思います。
   嘘は嫌いですから、子供に嘘をつくなんて思えません・・・。」
圭一「おいおい、それじゃあ矛盾するぜ。
   露伴さんは本家にいるのかいないのかどっちなんだよ。」
レナ「沙都子ちゃん、茜さんは本家じゃなくて"うち"にいないって言ったんだよね?」
沙都子「えぇ、そうですわ。はっきりと"うち"にはいないねぇって言いましたわよ。」
レナ「本家の敷地内の屋外にでもいるってことかな・・・?詩ぃちゃん。」
詩音「レナさん、鋭すぎます。とんだ名探偵ってやつです。
   だけど、ちょっと違います・・・。おそらく、地下祭具殿・・・。」

379 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 14:36:40.28 ID:YF7VRS8H0
圭一「地下祭具殿ッ!?なんだそりゃぁ?」
詩音「園崎本家には、庭園の山奥の中に地下室があるんです。
   園崎家に刃向かったり、失態を犯したものにケジメをつけさせる拷問室・・・。」
沙都子「ご、拷問ですってッ!?露伴さんがッ!!」
レナ「そ、そんなッ!本当にそんな部屋あるのッ!?」

沙都子とレナが取り乱す。
ヤクザが拷問部屋を持っていて、そこに露伴を連れて行った。
その意味するところは彼女達には残酷すぎたのだろう。
だが、圭一は冷静だった。

圭一「落ち着けッ!もしそうなら、それこそ一秒でもはやく露伴さんを助け出す必要がある。
   落ち着いて作戦を考えるんだ。」
沙都子「圭一さん・・・。」
レナ「そ、そうだね。はやくしなきゃ・・・ね・・・。」
圭一「詩音・・・地下祭具殿の場所と、あと本家の大体の地図を教えてくれ。」
詩音「わかりました。紙とペンを借りれますか?」

380 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 14:38:08.04 ID:YF7VRS8H0
詩音が本家の地図を描く。その中に参考までに、と雛見沢分校のグランドも描いてくれた。
こうして見ると、園崎家の大きさは半端じゃあない。

圭一「この祭具殿の入り口はこれだけか・・・?」
詩音「えぇ、扉も厳重です。鍵がない限り入るのは難しいです。」
圭一「魅音の協力がなければ、無理か・・・。
   あるいは正面突破か・・・。」
詩音「正面突破ですか・・・。とても作戦とは言えないと思いますけど。」
圭一「魅音が協力してくれればそれが一番いい。
   だけど、あいつにも立場ってもんがある。だからどこまで協力してくれるかわからない。
   俺達は友人に会いに行くだけなんだぜ?正面から堂々と行けばいい。」
沙都子「そうですわ!私達は露伴さんに会いに行くんですのよ!
    何もコソコソする必要はありませんわ。」
レナ「そうだね、露伴さんに会えれば、助ける方法もきっと見つかるよ。」
詩音「・・・圭ちゃんのそういうところは、結構好きですよ。」

381 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 14:39:02.74 ID:YF7VRS8H0
圭一「な、なんだよ、いきなり。」
詩音「そういう馬鹿っぽいけど、ついて行きたくなるところです。
 
   ・・・私も覚悟を決めましたよ。園崎本家がなんだってんです。
   私は露伴さんに借りがありますからね。この園崎詩音、命を張っても露伴さんに会いに行きますよ!!
   それに、沙都子にだけ危険なことはさせられませんからねッ!!」
圭一「よしッ!!そうと決まればあとは魅音だ!!
   いますぐ神社にいくぜッ!!」
一同「おおぉぉーーーーッ!!」

子供達が大騒ぎして出て行くので、圭一の母は何があったかと驚いた。
しかし、伊知郎に祭りではしゃいでるんだろうと諭されると、納得する。
明日は綿流しの祭り、圭一も友人の漫画家と出し物をやるらしい。
息子の晴れ舞台を見に行こうかと両親は話し合うのだった。

410 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 16:57:59.29 ID:YF7VRS8H0
4人は古手神社へと向かい、魅音を探す。
境内は祭りの準備の人たちで賑わっていた。

そんな中に魅音を見つけ、駆け寄る。
魅音も彼らに気づいたようだ。

魅音「あれー。圭ちゃんたちどうしたの?
   もしかして準備の手伝いにでも来てくれたわけー?」

圭一達の様子が普通でないことは魅音もわかっていた。
だからこの言葉が何の意味も持っていないことをわかっていた。

圭一「魅音、話があるんだけど、ちょっといいか?」
魅音「うーん、おじさんは祭りの準備で忙しいんだけどなぁ。
   あんまり長い話なら後にして欲しいんだけど。」
圭一「魅音ッ・・・大切な話なんだ・・・。」

411 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 16:59:14.27 ID:YF7VRS8H0
圭一達の様子に魅音も何の話かはっきりとわかった。
彼らの決意の固さも感じ取る。

魅音「わかったよ。祭りの準備の指示を出してくるから、
   少しだけ待ってて。」

圭一が頷くと、魅音はなにやら話し合いをしている老人達の輪へと入っていった。
しばらくして魅音が戻ってくる。魅音を加えた圭一達は人気のない場所へと移動した。

魅音「それで、何の話?」
圭一「わかっていると思うが、露伴さんの話だ。」
魅音「露伴さんが、どうかしたの?」
圭一「魅音、もう俺達はわかってる。レナと詩音にも話を聞いた。
   知らないふりをしなくていい。」

412 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 17:00:50.36 ID:YF7VRS8H0
魅音はレナと詩音の顔色を伺ったあと、全てがバレていることを悟った。
園崎家の人間としては話していい内容ではないのだが、バレているならしょうがない。

魅音「露伴さんは、みんなが思ってる通り多分うちにいるよ。
   でも、私はよく知らない。木曜の夜から一回も会ってないよ。」
圭一「魅音、お前の知ってることを全部話してくれ。
   知らないことは知らないでいいからさ。」
魅音「うん・・・。」

魅音は話す。
木曜の夜からの彼女の行動を。
魅音は木曜の夜に露伴を客間に案内し、自室で休んだ。
朝は母に促され、露伴の顔を見ずに登校した。

そして、そのまま今日まで露伴の顔は見ていないという。
ただ、お魎と露伴が地下祭具殿にいるという話を聞いただけだ。
そして、地下祭具殿へと食事の用意が運ばれていることだけを知っていた。

413 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 17:02:00.38 ID:YF7VRS8H0
圭一「詳しいことは魅音も何も知らないんだな・・・。
   露伴さんが地下にいるってことだけが確実な情報か・・・。」
魅音「うん。婆っちゃも地下にいて、ほとんど出てこないんだよ。
   だから、私も何が起きてるのかわからない・・・。
   お母さんは婆っちゃに何か言いつけられてるみたいだけど・・・。」
圭一「わかった。魅音、俺達は露伴さんに会いに行こうと思う。」
魅音「む、無理だよ・・・。祭具殿に親族以外を入れることなんてできないよ・・・。」
圭一「・・・そうだな。魅音にも立場があるのはわかってる。
   だから、無理は言わないって皆で話してきたんだ。
   魅音の家に入れてくれるだけでいい。」
詩音「おねぇ、あとは私達がお母さんに話をつけますから。
   家に入るだけ取り次いでください。」
レナ「魅ぃちゃん、お願い。露伴さんに会いたいの・・・。」
沙都子「魅音さん、私達は露伴さんの友人として会いにいくだけですわ。
    ご迷惑はおかけしませんわよ。」

414 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 17:03:26.01 ID:YF7VRS8H0
沙都子の友人という言葉が魅音の心に触れた。
魅音は少し、考えた後口を開く。

魅音「わかった・・・。
   そのくらいしかできなくて・・・ごめん・・・。」
圭一「気にするなよ、魅音。露伴さんは俺達が助け出すぜ。」
魅音「うん・・・1時間だけ、待ってもらってもいい?
   祭りの準備を少しだけしないと・・・。」
圭一「あぁ、わかった。1時間後に魅音の家の前に集合でいいな?」
魅音「うん、いつもの風車小屋のところで待ってる。」

圭一たちは神社を後にする。
沙都子とレナは着替えるために自宅へ向かった。
詩音は時間まで沙都子と一緒にいるといっていた。
圭一は一人、学校へと向かい、悟史のバットを手にした。

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