474 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 19:21:42.41 ID:YF7VRS8H0
風車小屋に圭一がついたとき、魅音以外の3人はすでに待っていた。
3人とも緊張しているようで、誰も口を開かない。
圭一はみんなの気を紛らわせようと口を開ける。
圭一「おいおい、俺らは友人に会いにいくだけだぜ?
家だって魅音の家だ。そんなに緊張することないだろ。」
詩音「圭ちゃんは、お母さんと鬼婆のことを知らないからそんなことが言えるんです。
いくら大見得を切ったって、私ゃ怖いですよ、あの二人は。」
レナ「あはは、確かに詩ぃちゃん達のお母さんは怖いねぇ。」
詩音「私は鬼婆のほうが怖いですけどねぇ。
レナさんは鬼婆が怖くないみたいですから、うらやましいです。」
沙都子「電話したときはお母様は優しい方でしたわよ?」
詩音もレナもいつになく弱気なことを言う。
圭一もなんだか少し不安になってきた。
だが、唯一の男である自分がしっかりしないといけない。
そう圭一は自分に言い聞かせた。
476 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 19:23:06.67 ID:YF7VRS8H0
ふと圭一は気づいたことがある。
沙都子が何かおかしい。なんだかいつもより可愛らしい気がする。
圭一「おい沙都子、おまえなんかしたか?」
沙都子「何のことでございますの?今日はトラップは仕掛けてませんですわよ。」
圭一「いや、そういうわけじゃなくてさ。なんか雰囲気が違うなーと思ってよ。」
沙都子「・・・さっき詩音さんに髪を切られたんですわ・・・。」
詩音「圭ちゃん、見る目がありますねー。よくぞ気づきましたっ。
沙都子の髪の毛がちょーっと可愛くなかったんでこう、チョキチョキっと。」
そう言って詩音ははさみをチョキチョキするジェスチャーをした。
沙都子「わ、私は断ったんですけど、詩音さんが無理に切るんですもの・・・。」
詩音「沙都子、女の子なんだから可愛くしなくっちゃあだめですよ。」
レナ「そうだね、今の沙都子ちゃんはすごくかぁいいよ。」
圭一「おい詩音、沙都子はおまえの人形じゃねぇんだから、あんまりいじくるなよ?」
沙都子「お人形だなんて失礼ですわね・・・。」
レナ「はぅー、お人形の沙都子ちゃんおー持ち帰りー☆」
477 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 19:24:04.58 ID:YF7VRS8H0
それからしばらく、3人で沙都子をからかってじゃれ合っていた。
そんなに長いこと待たないうちに魅音が神社から帰ってきたようだ。
魅音が来ると再び4人は緊張する。
魅音「みんな、揃ってるね。それじゃあ、家に行こうか。」
魅音の言葉に4人は頷き、園崎家へと歩いていく。
園崎家までの道のりは皆無言だった。
やがて、立派な正門が現れ圭一だけがびっくりする。
沙都子も含め残りの3人は見たことがあるようだ。
魅音が門の横のブザーを押してから口を開いた。
魅音「私一人なら勝手に横から入ればいいんだけどさ。
今日はお手伝いさんはいないから、母さんが出てくると思う。
中に入るまではなんとかするよ。」
圭一「あぁ、頼む。」
478 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 19:25:39.95 ID:YF7VRS8H0
圭一「はじめまして、前原圭一です。
魅音さんとも詩音さんとも仲良くさせてもらってます。」
茜「おやおや、うちの娘二人を二股にかけようってのかい?
圭一くんも女泣かせだねぇ。」
圭一「あ、あ、そ、そういうわけじゃなくてですね・・・。」
茜「赤くなっちゃって可愛いねぇ。冗談だよ?冗談。」
茜はクスクスと笑う。
圭一も第一印象は悪くないと思い、心の中でニヤリと笑った。
しかし、茜はその圭一の安堵を一言で吹き飛ばした。
茜「今日はうちは忙しいんだよ。
悪いけど、帰ってもらえるかい。」
魅音「お、お母さん・・・。」
茜「ほら、魅音、お友達にお帰り願いな。
詩音も用がないならさっさと帰るんだよ。」
沙都子「よ、用はありましてよ。」
茜「あら、アンタ沙都子ちゃんだねぇ。
"北条"のアンタがうちに何の用があるってんだい?」
茜が北条家なら容赦はしないという顔を見せる。
"鷹の目"で見入られた沙都子は言葉を発することができない。
レナも詩音も茜を相手に気押されているようだった。
479 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 19:27:50.59 ID:YF7VRS8H0
魅音があきらめ、皆を帰らせようとしたそのとき、圭一が口を開く。
圭一「ちょっと待ってくれよ。」
全員の視線が圭一に集まる。
もちろん、茜の"鷹の目"も圭一を射抜いた。
しかし、圭一は臆せずに続ける。
圭一「沙都子が北条だからとか、そんなこと関係ない。
俺達は、友人に会いに来たんだ。」
茜「友人?魅音のことかい?」
圭一「露伴さんのことだッ!!」
茜「・・・。露伴さんはうちにはいないって、昨日電話したと思うんだけどねぇ。」
圭一「その"うち"って言うのはどこのことなんですかね?
園崎家の敷地内に露伴さんがいないって、はっきりそう言ってくださいよ。」
茜「くッ・・・、魅音・・・あんた・・・。」
詩音「おねぇは関係ないです。
私達が推理しただけですよ、さぁ、お母さん。
敷地内に露伴さんがいないなら、はっきり言ってください。」
茜「・・・入りな。」
茜はそう言うと、扉を開けたまま奥に引き下がる。
圭一達は茜に見えないようにガッツポーズをした後、門をくぐるのだった。
523 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 21:27:35.62 ID:YF7VRS8H0
圭一達が無言で門をくぐり終えると、茜が魅音に目配せをする。
魅音は意図を読み取り、扉を閉め、閂を通す。
退路が絶たれたと思うと、圭一は武者震いがした。
茜は無言のまま歩いていく。魅音はすぐ横に付き添っている。
茜達の後ろに圭一、レナ、詩音、沙都子の順に続く。
沙都子は怖いのか、詩音に手を握られながら最後尾を歩いていた。
茜達はそのまま母屋までたどり着く。
扉を開け、圭一達を中に入れようとした。
圭一「えっと・・・魅音のお母さん。
俺達はここには用はありません。」
525 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 21:28:39.16 ID:YF7VRS8H0
茜「・・・茜だよ。覚えときな。」
圭一「それじゃあ、茜さん。俺達は露伴さんに用があります。
露伴さんは、"地下祭具殿"にいるんですよね?」
茜「へぇ・・・そこまで知ってるのかい。
でも、ひとつ聞いていいかい?」
圭一「なんですか?」
茜「私ゃ、さっき露伴さんに会わせるって言ったかねぇ?」
圭一「・・・。」
圭一達と茜の間に不穏な空気が流れる。
魅音はどっちについたらいいものかとキョロキョロしていた。
圭一「じゃあ、俺達を何で入れたんですか?」
茜「うちら園崎家っていうのはさ、警察とあんまり仲がよくなくてねぇ。
あんたたちに、露伴さんが監禁されてる、なんて通報されたらたまったもんじゃないのさ。」
圭一「つまり、俺達を帰す気はないってことですか?」
その圭一の言葉を聞き、レナや詩音は体を強張らせる。
沙都子は詩音に抱きついていた。
526 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 21:29:39.77 ID:YF7VRS8H0
茜「おやおや、人聞きが悪いったらありゃしないね。
露伴さんがお帰りになるまで、君達も泊まっていってもらおうかってだけさね。」
圭一「魅音の友達として招待してもらえるってわけじゃあなさそうですね。」
茜「乱暴なことはしないよ。明日の綿流しのお祭りが終わるまで、
うちで遊んでってくれりゃあいいのさ。」
圭一が茜に睨み返していると、レナが口を開いた。
レナ「綿流しの祭りが終われば、露伴さんは解放されるんですか?」
茜「私ゃ詳しいことは知らないけどね。鬼婆さまがそうおっしゃってるよ。」
レナ「圭一くん・・・どうしよう・・・。」
圭一「どうもこうもねぇ・・・俺は最初に言ったはずだぜ。
俺達は露伴さんに会いに来たってな。」
魅音「圭ちゃん・・・。」
圭一「その返答が、家で遊んでろだぁ?
そりゃぁ明確なNoって答えだよなぁ、レナ。」
レナ「・・・うん・・・そうだね。」
528 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 21:31:13.97 ID:YF7VRS8H0
レナと圭一の目つきが変わる。
詩音も二人の覚悟を感じ取ったらしく続いた。
詩音「お母さん、私達は露伴さんに会いに来たんです。
それを止めるっていうなら・・・。」
沙都子「容赦しませんわよッ!!」
沙都子が詩音から離れ、一歩踏み出して言い放った。
詩音「沙都子・・・。」
沙都子「露伴さんは私の友人ですわ。
その友人を閉じ込めて会わせないって言うなら、私は容赦しませんわッ!!」
圭一「よく言ったぜ沙都子ぉ。茜さん、そういうわけだ。
祭具殿の鍵を出してもらぜッ!!!」
圭一はそう言うと、ケースに入っていたバットを取り出し茜へ突き立てて構える。
すると、家の中から葛西を含む数人の男達が飛び出してきた。
沙都子や圭一が声を張り上げたので気づいてきたらしい。
男達は茜を中心に圭一達を取り囲むように広がった。
魅音は一人邪魔者のように男達の後ろへと追いやられた。
531 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 21:33:01.80 ID:YF7VRS8H0
茜「圭一くん・・・。アンタが娘の友達だから1回だけ忠告してやるよ。
アンタ、ここで獲物を私に向けるってぇーのがどういうことかわかってやってるのかい?」
圭一「さぁな、ぜんっぜんわかんねぇよ。」
茜「ふふふ、お馬鹿さんだねぇ。おばさんが教えてあげようか?」
圭一「あぁ、馬鹿にわかるように説明してくれよ。」
茜「威勢だけはいっちょまえだねぇ。ふふふ。
・・・ここは園崎本家。そこらの家と違って山奥みたいなもんさ。
アンタ達が泣こうが叫ぼうが誰にも助けは届かない。
もし、アンタ達の身に何があっても誰も助けてくれないよ?」
圭一「だからなんだってんだ。」
茜「まぁーだわかんないってのかい・・・。
この"鹿骨の鬼姫"と呼ばれた園崎蒐に獲物向けといて、
タダで済むと思ってんのかって聞いてんだよッこの糞餓鬼がぁぁぁあああッ!!」
茜が今までに見せたこともない顔で凄む。
圭一達だけでなく、葛西以外の若い衆までその勢いに気圧される。
533 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 21:34:59.86 ID:YF7VRS8H0
レナはこれは相手が悪いと諦めかけた。
詩音もかつて見たこともない母の顔に恐怖を覚えた。
沙都子も今すぐに逃げ出したいのを堪えるので必死だった。
そんな中、圭一だけが茜を睨み続ける。
そして長い沈黙の後、口を開いた。
圭一「駄目だな・・・。ぜんっぜん駄目だぜ・・・。」
茜「・・・降参かい・・・?」
茜は圭一の目が死んでいないことに気づいていた。
しかし、圭一の不敵さはそう聞き返さずにはいられないものだった。
圭一「違う・・・。駄目なのはアンタだぜ、茜さん・・・。
アンタこそ何もわかっちゃいねぇ・・・。」
誰もが圭一の言っている意味がわからなかった。
全員の注目が圭一に集まる。
圭一「アンタこそよ、全然わかってねぇんだよ・・・。
この前原圭一が仲間に会わせろってバットを構えてる意味がまったくわかってねぇッ!!!
アンタこそ覚悟しろッ!!俺達の仲間を捕まえてッ会わせもしねぇでッ!タダで済むと思うなァァアッ!!!」
535 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 21:36:30.80 ID:YF7VRS8H0
圭一が叫び終わるとレナも詩音も沙都子も、もう怯えてなんかいなかった。
レナはカバンから鉈を出す。カバンを横に放り投げ鉈を構えた。
沙都子はポケットに手を入れ何かを掴んで構えている。
詩音もスタンガンを構えた。
レナ「茜さん、私・・・友達のためなら容赦しないですからね・・・。」
沙都子「本当は裏山で迎え撃ちたいところですが、しょうがありませんわねぇ。」
詩音「まさか、葛西にこれを使う日が来るとは思いませんでしたよ。
ねぇ、葛西・・・?」
葛西「・・・。」
4人が構え、互いに背中を任せあうように陣取る。
茜はまさかこうなるとは思わなかったらしく口を開けて驚いていた。
魅音「やめてッ!圭ちゃんもレナも詩音も沙都子もッ!!
みんなやめてッ!!」
魅音が男達の後ろから割り込んでこようとする。
しかし、茜に一喝された。
茜「黙ってなッ!!」
537 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 21:37:25.79 ID:YF7VRS8H0
茜の一言に魅音の体は凍りつく。
割り込もうとした男達に押し戻されてしまった。
茜「そこまで上等キメられちゃあ、こっちも黙ってらんないね。
さぁ、かかっておいでよ、坊や達。」
茜はそう言うと懐から短刀を出し、構えた。
葛西を含む男達もみな構える。
もう誰も言葉を発しない。
誰かが言葉を発すれば、それが戦いのスタートになるからだ。
そんな中、圭一が口を開く。
圭一「いっくぞぉぉおおーーーーッ!!!」
圭一が茜に飛び掛った。
641 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 23:50:23.54 ID:YF7VRS8H0
圭一「ウッディッ!!!」
圭一が茜に向けてバットを振り下ろすが、バットは空を切り地に叩きつけられる。
茜がヒラリとかわしたのだ。剣道有段者の茜にとって、
圭一のバットの一振りなど下手投げのボールをよける程度のものだった。
バットを振り切った圭一に男達が飛び掛る。
3人の男が圭一に飛びつき、押さえ込もうとした。
圭一はなんとか抵抗するが、組み伏せられるのは時間の問題だろう。
残る3人はこの隙を逃さない。
圭一のおかげで今手が空いているのは葛西と男3人に茜。
少しでも相手が少ないうちに仕掛ける必要がある。
642 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 23:50:49.40 ID:YF7VRS8H0
まずは詩音が飛び出した。
詩音は葛西の相手が務まるのが自分しかいないと思った。
葛西にスタンガンを向け、飛び掛かる。
詩音と葛西も組み合う形になる。
残った男達に沙都子は飛び掛った。
ポケットから取り出した香辛料の混合物を男達の顔に向けて投げつける。
男達は目をやられ、視覚を失いながら沙都子を追いかけることになる。
パンッパンッ
視覚を失った男達の足元で沙都子の癇癪球が破裂する。
男達もそれには動揺を隠せず、場は混乱しはじめた。
沙都子とそれを追う男達が茜の視界を遮ったそのとき。
一瞬にしてレナが茜との間合いを詰め、鉈で殴りかかった。
茜がレナの攻撃に気づいたとき、すでに避けられないほどレナは接近していた。
ガキィッ、ビィリィィィイイッ!!
645 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 23:52:29.14 ID:YF7VRS8H0
茜はなんとか短刀でレナの鉈の軌道を逸らした。
そのとき、レナの鉈に着物の袖を持っていかれる。
茜「やってくれるねぇ・・・レナちゃん。
この服は気に入ってたんだよッ!!」
茜がレナとの間合いを一気に詰める。
レナは抵抗しようとし、鉈を振るが茜のほうが手が早かった。
合気道かなにかだろうか、あっという間にレナを組み伏せ地面にたたきつける。
そしてレナの首に短刀を当てて言った。
茜「レナちゃん、いい子だから動かないでおくれよ。
おばさんも娘の友達は殺したくないからねぇ。」
圭一「レナを離せぇぇぇえええッ!!」
バットを捨てることでなんとか3人の男から逃れた圭一が茜に殴りかかってきた。
茜はレナを離すと圭一の攻撃を避けて間合いを取る。
650 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 23:53:46.16 ID:YF7VRS8H0
茜と二人は間合いを開けたまま睨みあった。
沙都子は既に捕まったようだ。
詩音も葛西にスタンガンを取り上げられ、後ろ手に掴まれている。
詩音「葛西ッ!!放しなさいよッ!このっ、このッ!!」
葛西「詩音さん、こんなことの為にスタンガンを差し上げたのではないんですがね。」
詩音「うっっさーい。何に使おうと私の勝手でしょーッ!」
沙都子も詩音もなんとか反撃しようと抵抗しているようだが、
明らかに形勢は圭一達に不利だった。
レナも圭一も諦めてはいなかった。
だが、何か他の手を打つしかないと、自分達の負けを悟っていた。
5人の男がレナと圭一を組み伏せようと近づいていく。
まさにその男達が飛びかかろうとしたとき、
「やめなさいッ!!」
651 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 23:55:06.44 ID:YF7VRS8H0
その声に一同は声の主を伺う。
その声の主は、魅音だった。
魅音「やめなさい。詩音と沙都子も放しなさい。」
魅音の鋭い目つきに男達は茜と魅音を見比べた。
どちらに従えばいいのか困惑しているようだ。
茜「それは、園崎家頭首代行としての言葉かい?」
魅音「えぇ、そうです。」
茜「ふふん。私にはアンタが友達をかばって言ってるようにしか聞こえないねぇ。
頭首代行として、この場を収める理由を聞かせておくれよ。」
茜が睨みつけるが、魅音はそれを睨み返し、堂々と応える。
魅音「今日は綿流しの前日です。
夜には村長や役員が本家を訪れるでしょう。
このまま続ければ園崎本家の玄関先が血まみれになる。
それだけでは不満ですか?」
茜「・・・放しておやり。」
652 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 23:56:48.94 ID:YF7VRS8H0
男達は茜に命じられると、沙都子と詩音を開放した。
詩音が沙都子を抱きしめながら、圭一とレナの元へ戻る。
茜「場を収めたのはいいけど、この子らはどうするんだい?」
魅音「彼らに非はありません。
彼らは友人に会いに来ただけです。
地下祭具殿の鍵を持ってきてください。」
茜「それも頭首代行のお言葉で?」
魅音「・・・。
これは、頭首"代行"の言葉ではありません。
園崎家次期頭首園崎魅音の判断です。」
茜「婆様がお怒りになったら、ケジメはあんたが取るっていうんだね。」
魅音「そういうことになりますね。」
圭一「違う・・・、もし魅音がケジメをつけるなら、それは魅音だけじゃない。
俺達もつける。俺達は魅音の仲間だからな。」
茜はその圭一の言葉を聞くと、誰にも見えないようにクスクスと笑った。
茜「祭具殿の鍵を持って来るから待ってな。
次期頭首様の言葉には逆らえないからねぇ。」
そう茜は言い残して母屋の中に消えていった。
葛西も男達を引き連れ、母屋に戻っていった。
654 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/13(日) 23:57:58.04 ID:YF7VRS8H0
残された圭一達はやっと緊張が解けたようだ。
沙都子と詩音はその場にぺたんと座り込んでしまう。
詩音「流石に、今回は死ぬかと思いましたねぇ。」
沙都子「私も、もうヘトヘトですわぁ。」
圭一が魅音に近づき、声をかける。
圭一「魅音・・・すまない。」
魅音「もう、圭ちゃんたちってば勝てない喧嘩ふっかけるんだから。
おじさんも流石にあれは無謀だとおもうんだけどぁー。」
圭一「・・・大丈夫なのか?俺達をかばって。」
魅音「・・・かばったんじゃないよ。
私も圭ちゃん達が正しいと思っただけだよ。」
圭一「そうか。」
詩音「おねぇが最初から助けてくれればこんなことにはならなかったってんです。」
詩音の嫌味を無視して圭一は魅音の頭をぐしゃぐしゃと撫でてやった。
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