844 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:22:42.65 ID:px5ziGJ/0
圭一達が玄関で話していると、茜が奥から出てくる。
葛西と数人の男もついてきていた。

茜「鍵は持ってきたよ。私達もついていかせてもらう。
  頭首様になにかされたらたまったもんじゃないからねぇ。」
魅音「それじゃあ、みんな行こう。」

魅音の呼びかけに全員で頷き、地下祭具殿へと向かった。

845 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:24:02.57 ID:px5ziGJ/0
地下祭具殿は園崎本家敷地内の奥まった部分にあった。
そこに至るまでにはけもの道のような細い道を抜けなくてはならない。
本当に山の中という言葉がぴったりな場所。周りには斜面があり、入り口はそのくぼみの中にある。
たとえこの敷地に入り山に迷い込んでも、運がよくなければ発見できないような場所にその入り口はあった。

入り口はまるで防空壕のようだ。
急な斜面を掘りすすめたトンネル。
その奥に鉄製の巨大な扉があった。

茜が葛西に鍵を渡し、葛西がその厳重な扉を開ける。
中は真っ暗だったが、圭一が葛西を押しのけ、入り口の中と入った。

圭一「露伴さんッ!どこだー、露伴さーんッ!」
魅音「圭ちゃん、多分露伴さんはもっと奥だよ・・・。」

846 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:25:06.50 ID:px5ziGJ/0
魅音が電気のスイッチをつける。
ここから先は木造のトンネルになっており、本当に地下室と呼ぶにふさわしい物だった。
魅音が先頭を歩き、圭一達があとに続く。その後ろに茜達も続いた。

トンネルは入り組んでいたが、魅音は迷いもなく歩いていく。
途中には生活できそうな部屋などもあり、園崎家の隠れ家のようなものに見えた。

しばらく歩くと、今までになかったような大きな扉が現れた。
魅音はその前で立ち止まると、全員に言う。

魅音「みんな、詩音から聞いてると思うけど、この奥が拷問部屋になってる・・・。
   多分、この奥に露伴さんはいると思う。覚悟は・・・いい?」
圭一「へへっ、何の覚悟がいるってんだよ。
   露伴さんに会いに来ただけなんだ、何の覚悟もいらねぇぜ。」
沙都子「そ、そうですわ。露伴さんがいるならさっさと開けてくださいまし。」
レナ「レナも、大丈夫だよ。」
詩音「私は、2度目ですから大丈夫です。」

魅音は全員の返事を聞き終えると、その大きな扉を開けた。

848 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:26:19.17 ID:px5ziGJ/0
扉を開けると、中は明かりが灯っていた。
壁も床もタイル張りのその部屋の中は、拷問道具が所狭しと保管されていた。
よく整備されたそれらは、刃を持つものはその光で、棘や針の類はその鋭さで、
部屋に訪れた新しい獲物をニヤニヤと見つめているかのようだ。

そのタイル張りを抜けた奥に、一段高くなった座敷がある。
そこは畳張りで、座布団が置いてあった。まるで見物席か何かのようだ。

そこに、お魎と露伴の姿があった。
お魎は布団を敷き、その中で体を起こしている。
露伴はその側に座布団を敷き、正座していた。

圭一「露伴さんッ!」
沙都子「無事ですのッ!?露伴さんッ!!」
露伴「どうしたんだい?こんなところに。」

850 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:27:32.85 ID:px5ziGJ/0
露伴は見た限り無事なようだった。
外傷もなさそうだし、健康そうだ。
圭一達は露伴のほうへと駆け寄る。

圭一「露伴さん、心配したんだぜッ。」
沙都子「露伴さん、助けに来たんですわよ。」
レナ「大丈夫かな?かな?」
詩音「まぁ、簡単に死ぬようなお人じゃあないと思ってましたけど、
   無事そうでなによりです。」

お魎「しゃあらしいわッ!!こん餓鬼どもなぁん勝手に入ってきよん!!
   誰ぞ、こん餓鬼ども追い出しぃッ!!」

お魎の叫びを聞き、まだ露伴を救うのが終わっていないことを圭一達は思い出す。
露伴の無事な姿を見てつい忘れてしまっていた。

茜がお魎の横へ行きなにやらヒソヒソと話す。
事情を説明しているのだろう。

茜「とりあえず、おあがり。」

851 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:28:35.57 ID:px5ziGJ/0
茜に促され、圭一達も座敷へと上がる。
露伴の側に全員が座った。

茜「ほら、黙ってないで挨拶をしなよ。
  園崎家頭首の御前だよ?」

茜に促されると、圭一が口を開いた。

圭一「はじめまして。前原圭一と言います。
   雛見沢には最近越してきました。露伴さんの友人です。」

圭一がそう言い頭を軽く下げた。

お魎「お前が挨拶せんでもお前のことはよーぅ知っとるんね。
   引越しの挨拶もせんで、どの口が雛見沢に越してきたんなんて言うんッ!
   ホンマあっほらしッ!!」

圭一への罵倒の言葉を吐き終えると、お魎はその"鷹の目"をレナに向けた。

852 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:29:35.64 ID:px5ziGJ/0
お魎「レナちゃんはえぇ子やと思とったけんど、なぁんね?
   なぁんいつんかこん礼儀知らずと一緒におるようになったんね?」
レナ「おばあちゃん、急に押しかけてすみません。
   レナも露伴さんの友達です。だから会いに来たんです。」

レナが挨拶を終えたので、お魎の目は沙都子へと向かう。
しかし、お魎から沙都子に話しかけることはない。
お魎の視線にたまらず、沙都子が口を開けた。

沙都子「ほ、・・・北条沙都子でございますわ。
    私も露伴さんの友人ですわ。」

お魎の肩がプルプルと震える。
そして目を見開き、沙都子へと罵声を浴びせた。

お魎「だぁって聞いとん、北条の糞餓鬼がどん面ァ下げてわしぃんとこ来よるんねッ!!
   言葉使いもなっとらんわドアホぅッ!!!
   北条が園崎本家の敷居を跨いで生きて帰ぇれると思うとんかぁぁああッ!!」

865 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:47:26.22 ID:px5ziGJ/0
お魎の言葉に沙都子はもう口を開けることはできなかった。
その様子に満足したのか、お魎は詩音へと視線を移す。

お魎「おみゃは、レナちゃんのおかげで園崎の末席に加えてもらったんと、
   もう爪ぇ剥ぎたくなったんかぁ?あぁん?詩音ぅ?」
詩音「わ、私も・・・露伴さんの友人です。」

詩音はそれだけ言い返し、お魎を睨み返した。
お魎は詩音の決意の固さを読み取り、最後に残った魅音に視線を移す。

お魎「魅音・・・。なぁんね?
   なぁん園崎以外の姓がこん祭具殿に出入りしとるんね?」

866 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 15:48:19.82 ID:px5ziGJ/0
魅音「婆っちゃ・・・。
   みんなは友人に会いに来ただけです。
   だから、通しました。」
お魎「なぁん勝手な真似をしさらしとん!!
   来た理由なん聞いとらんわぁ!!なぁん祭具殿まで入れたか聞いとんね。
   すったらん許されんことなんはわぁっとるん。」
魅音「私の判断で通しました。
   ケジメをとれと仰るなら、私が取ります。」
お魎「よぅ言うたわ・・・。
   すったらん、魅音だけ残り。糞餓鬼どもはさっさと帰ぇせ。」
魅音「婆っちゃ・・・。」
お魎「友人には会えたんな。なら用は済んだっちゅうもんやね。」

お魎が茜に目配せをし、茜が葛西に目配せをする。
座敷に上がらずに控えていた葛西たちが圭一達を連れ出そうと、動き出した。

905 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:33:40.88 ID:px5ziGJ/0
圭一「待ってくれよ!!」
茜「なんだい?圭一くんたちの用は済んだだろう?
  露伴さんには会えたんだ。まだ用があるってのかい?」
圭一「あぁ、そうだ。俺たちにはまだ用がある。
   俺たちは、露伴さんを助けに来たんだッ!!」
茜「ちょいとお待ちよ。
  露伴さんがここにいるのは園崎家と露伴さんの問題なんだよ。
  アンタ達が口を出すことじゃないんじゃあないかい?」
圭一「俺たちは露伴さんの友達だッ!仲間だッ!!
   露伴さんが地下に閉じ込められてるってんなら助けだす!!」
茜「露伴さんがアンタたちに助けを求めたのかい?」
圭一「助けは・・・求められてない。・・・でも、でもわかるッ!
   露伴さんは沙都子に何も言わずにいなくなったりしないッ。
   俺とも約束があるッ。一緒に祭りで出し物をするんだッ!
   綿流しが終わるまで地下にいるなんて、そんなこと絶対ないッ!!」
レナ「レナも・・・圭一くんの言うとおりだと思います。
   露伴さんは私たちとお祭りにいくんです。」
沙都子「そうですわ、私と一緒に露店を回りますのよ。」

茜は飽きれたようなジェスチャーをすると、露伴を向いて言った。

茜「露伴さん、なんとか言ってやっておくれよ。」

露伴「ふふふ。そうだなぁ。
   そろそろ沙都子ちゃんの作るご飯が食べたいかな。」

907 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:34:28.41 ID:px5ziGJ/0
茜は露伴は既にお魎に屈服していると思っていた。
だからこの返答は予測できなかった。

お魎が茜を呼ぶ。
茜はお魎の口元に耳を傾けた。
なにやらまたヒソヒソ話が始まる。

茜が何度か聞き返すと、話は終わったようだった。

茜「頭首は大変機嫌がいい。
  あんたたちの心意気に免じて、露伴さんは解放しよう。」

この言葉に圭一は再びガッツポーズをした。
ほかの皆も互いに顔を見合って喜んだ。
それを遮るように茜が言う。

茜「ただし、あんたたちが祭具殿に押しかけたケジメをつけられたら、だそうだよ。
  それができないなら、この話はなしさね。」
お魎「カカカッキキキ・・・クッククク・・・。」

お魎が楽しそうに笑う。その異常な笑い方に皆は恐怖を覚えた。
誰もが凍りつく。そのケジメの意味に震える。

908 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:36:01.85 ID:px5ziGJ/0
その静寂を破ったのは露伴だった。

露伴「ケジメをつければ、この子達は許してもらえるんだな?」
茜「おやおや、露伴さん、せっかく助かったのに怪我したいってぇのかい?」
露伴「おいおい、園崎家っていうのは質問に質問で返すように教えられてるのか?
   質問文に質問文で答えると、テストで0点なんだぜ?知ってたか?」
茜「口の減らないお人だねぇ。ケジメをつければ許さないこともないって言ってるんだよ。」
露伴「うやむやにされちゃあ困るからな。
   ケジメをつければ、園崎家がこの子たちに不利益を与えることはない。
   そう約束しろよ。」
茜「これは取引じゃあないんだよ?ケジメをつければ考えたげるって言ってんのさ。」
露伴「おっとすまない。これは取引じゃないって?
   そうなのかい?」

そう言うと露伴は茜を睨み付ける。
先日の晩のときとは比にならない恐ろしい目だ。
スタンド使いが本気になった目。そう言えばもうわかってもらえると思う。

露伴「僕がその気になれば、ここから出ることもたやすいんだがね。
   そっちの顔を立てて取引してやろうって言ってるんだよ。」

露伴が本気を出せば茜も口を開けることはできなかった。
ヤクザの本職である茜や葛西にはわかった。露伴を敵にしてはいけないことが。

910 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:36:58.54 ID:px5ziGJ/0
お魎「ふ、はっはっはぁ!
   茜を黙らすんとは、大した器じゃアアアアアアハハハハハハハハハハーッ!!
   そん器がどーぅケジメつけてくれるんね?あぁん?」

お魎の言葉を受け、露伴が子供たちの人数を数える。

露伴「1,2,3,4,5・・・。」

そして露伴は左手をすっと自分の顔の前にかざした。
左手の甲はお魎に向けられていた。

913 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:37:52.19 ID:px5ziGJ/0
露伴「5人ってことは爪5枚でいいんだろ?」

露伴のその言葉にお魎は何も返さない。
それを同意と理解し、茜は葛西に目配せをした。
葛西が部屋の隅にある拷問道具を用意し始める。

それに気づいた圭一達が露伴を止めに入る。
彼らは口々に露伴を説得しようとするが、露伴が聞くはずはない。
ついには茜とお魎一喝され、圭一達は口を閉じるしかなかった。

露伴は何食わぬ顔で座敷から降りる。
そして拷問道具の準備を終えた葛西から道具の説明を受けた。
圭一達は座敷で露伴のケジメを見守るよう、茜に言われた。

露伴「なるほどね、ここが爪の間に入るんだな。
   これがこっちに繋がってテコの原理になってる。
   このハンドルを叩けば、爪が剥げるってわけか。よくできてるなぁ。
   こっちのところはなんだい?」
葛西「そこは足を固定するバンドです。
   手の爪とは限りませんので。」

914 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:38:45.30 ID:px5ziGJ/0
露伴はまるで珍しいおもちゃでも見るかのように葛西から説明を受けていた。
その説明も一通り終わる。

露伴「よし、じゃあ始めるか。」
葛西「はい、お手伝いさせていただきます。」

葛西がそう言い、露伴の手を固定する。
皆の注目が露伴に集まる。

露伴「あー、詩音ちゃん。
   沙都子ちゃんには見せないようにしてもらっていいかい?」

露伴がそう言うと、詩音が沙都子の目を手で覆った。
それを確認した露伴は何のためらいもなく、一打目を振りかぶった。



ドンッ!!

916 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:39:56.86 ID:px5ziGJ/0
圭一達はつい、目をつぶってそむけてしまった。
その目を開ける。

圭一達の場所からはパっと見はよくわからない。
ただ、露伴の小指に何か違和感があった。それを目の焦点をあわせ見てみる。
爪が剥がれ、まるで露伴の指にしてあったフタがぱっくりと開いているようだった。
誰も言葉を出すことはできなかった。

葛西が道具をいじり、露伴の次の指にセットする。
露伴は今度は一気に振り下ろさず、ゆっくりとハンドルを押していく。
まるでゆっくり爪が剥がれていくのを観察しているかのようだった。
2枚目を剥ぎ終わる。露伴はまったく冷静なままだった。

露伴「なるほど、いい経験になったよ。
   漫画に生かせそうだ。ふふふ。」
茜「く、口の減らないお人だねぇ・・・。」
露伴「ふふふ、もう満足したからあとはさっさと終わらさせてもらうよ。」

あとはただの流れ作業だった。葛西が道具をいじり、露伴がハンドルを叩く。
それだけの単調な作業に見えた。

ドンッ    ドンッ     ドンッ

919 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:41:08.72 ID:px5ziGJ/0
露伴が左手の爪をすべて剥がし終える。

露伴「これで満足か?」
茜「・・・。」

茜はお魎に近づき、お魎の指示を受ける。
茜はそれにうなずくだけだった。

茜「婆さまは頭痛がしてきたからもう付き合えないそうだよ。
  このあとのことは私が任された。葛西は露伴さんを病院へ連れてきな。
  子供たちは、上でお茶でも飲んで帰りな。」

葛西が露伴の手の拘束をはずし、そとへ連れて行こうとする。
沙都子はここでやっと目隠しをはずされた。

露伴「おい、さっきの取引は有効なんだろうな?」
茜「ケジメはつけたからね、さっきのあんたの言うとおりにするよ。」
露伴「ふ、ふふふ・・・それはありがたいことで。」
茜「何がおもしろいってんだい?」

露伴の嫌味な笑いに茜が食いついた。

920 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/01/14(月) 19:41:48.29 ID:px5ziGJ/0
露伴「"園崎家がこの子たちに不利益を与えることはない"
   つまり、"園崎家が北条沙都子に不利益を与えることもない"。
   それで笑っただけだよ。」
茜「・・・こりゃぁ一杯食わされたねぇ。」
露伴「ふふふ、病院に行かせてもらうよ。
   僕だって痛みがないわけじゃあないからね。」

露伴はそう言うと拷問室を出て行く。
露伴がいなくなった途端、緊張の糸が切れたのか、沙都子がわんわんと泣き始めた。
圭一達も安堵の声を漏らす。お魎はなにやらニヤニヤと笑っていた。

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