62 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:14:33.88 ID:RGGpyKaB0
ブシュゥゥウッ!!
露伴の左手の包帯が飛び散った。
いや、正確には露伴の左手の肉が飛び散り、
その勢いで包帯も飛び散ったのだ。
そして、鷹野が発射した銃弾は、空中に静止していた。
露伴「ふむ。やはり、僕の天国への扉(ヘブンズ・ドア−)には、
無傷で銃弾をとめるほどのパワーはないようだね。」
そう、露伴は天国への扉(ヘブンズ・ドアー)の左手で銃弾を受け止めた。
それが鷹野には銃弾が空中に静止しているように見えた。
この場に居るものの中で、天国への扉(ヘブンズ・ドアー)が銃弾を止めているのを認識できたのは、
梨花だけだった。
63 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:15:35.86 ID:RGGpyKaB0
鷹野「あなた・・・何者なのッ!?」
露伴「だから言ってるじゃないか、僕はジョーカーだよ。もう一枚のね。」
鷹野「くっ!!」
鷹野は再び引き金を引こうとする。
仮に露伴が銃弾を空中に静止できるとしても、
鷹野にはもう撃つしか選択肢が残されていなかったからだ。
露伴「2発目を撃たせてやる義理はないな。
天国への扉(ヘブンズ・ドアー)ッ!!」
ドシュッ
『体が動かなくなる』
64 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:16:25.10 ID:RGGpyKaB0
露伴が鷹野の体へと文字を飛ばす。鷹野の体が本と融合した状態になり、露伴の文字が書き込まれる。
鷹野は引き金を引けず、その場に立ち尽くしたまま動けなくなった。
鷹野「か、体が・・・、な、何してるのよ!!
取り押さえなさい!!」
露伴「おっと、口は動いたか。」
山狗たちは一斉に露伴へと飛び掛ろうとする。
後続の山狗が合流したため、その数は6人どころではなかった。
だが、露伴にとって数は関係なかった。
かつて鉄平達を叩きのめしたときと同様に天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使って体術を駆使する。
死角がなく、人間とは思えないスピードで動き、時には重力に逆らっているかのような姿勢をとる。
そんな露伴に山狗たちは何人居ても勝てるはずがなかった。
66 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:17:33.83 ID:RGGpyKaB0
この光景は沙都子には、複数の叔父暴れまわっているように見えた。
叔父が、自分の周りで暴れまわっている。
沙都子にとってこれ以上恐ろしいことはなかった。
だが、沙都子は違和感を感じる。
ほんの少しの違和感。それはじわじわと大きくなり、
錯乱しながらも少しずつ違和感の理由を理解していく。
叔父が暴れまわっている?違う・・・。
叔父は、叔父は戦っているのだ。
叔父は、叔父同士で戦っている。
いや、1人の叔父と、残りの叔父が戦っている。
戦っている?それも違う・・・。
1人の叔父が、残りの叔父を・・・倒しているのだ。
1人の叔父が、沢山の叔父を倒している。
あれ?そうだ、私は覚えている。
叔父が倒されるのを覚えている。
68 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:17:59.41 ID:RGGpyKaB0
そうだ、叔父を倒してくれるのは、叔父じゃない。
叔父を倒して、叔父を倒して私を助けてくれるのは・・・、
沙都子「露伴さんッ!!」
71 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:20:50.16 ID:RGGpyKaB0
沙都子が露伴の名を叫んだのは、
露伴が最後の叔父の延髄に回し蹴りをぶち込んだときだった。
露伴「すまない。沙都子ちゃん。
帰るのが遅くなったよ。夕御飯がもう冷めちまったかな?」
沙都子「露伴・・・さん・・・。遅いですわ・・・。
罰としてお夕飯は抜きですの・・・よ・・・。」
露伴「そりゃあ困ったな。昼から何も食べてないんだ。」
そう言いながら、露伴は手足を縛られ寝転がっている沙都子の頭をなでてやった。
そして立ちつくしたままの鷹野の下へと歩いていく。
鷹野「な、何よ・・・。アンタなんなのよ・・・。」
露伴「君は喋らなくていい。読むほうが楽だからね。」
そう言って、露伴は鷹野の顔のページをペラペラとめくる。
そして、無造作に顔のページを引き剥がした。
鷹野はページを引き剥がされたショックで気を失った。
73 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:22:25.72 ID:RGGpyKaB0
露伴「さてっと、羽入はいないのか?」
露伴はそう梨花に問いかける。
だが、梨花は答えず、俯いたままだった。
露伴「・・・。」
「ここにいるのです。」
答えたのは羽入だった。
露伴の後ろにいつのまにか現れていた。
露伴「どこにいたんだよ。おまえのご主人様が死ぬかもしれないってときに。」
羽入「僕は・・・ちゃんと見ていましたのです。
露伴こそ・・・こんな大事なときに・・・。」
露伴「うん?さっきも言ったが、僕は間に合ったぞ。
梨花を殺す人間をちゃあんとみつけたじゃあないか。」
梨花「間に合ってないわよッ!!」
羽入の方から視線を梨花に移すと、梨花が露伴をにらみつけていた。
74 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:23:23.71 ID:RGGpyKaB0
梨花「みんな・・・みんな殺されたわ!あんたが来るのが遅いからよ!!
遅い遅いッ!全然間に合ってないわッ!!
私だけ助かってもだめよッ!!みんながいなきゃ、だめなのよッ!!」
露伴「僕は・・・君を助ける約束なんてしたか?」
梨花「あんた、まだあんなことを根に持ってるのッ!?
だからってッ、圭一達は悪くないじゃないッ・・・あなた・・・
圭一達とあんなに仲よさそうにしてたじゃない・・・。」
露伴「彼らは僕によくしてくれた。
僕も・・・彼らが好きだったよ。」
梨花「じゃあ・・・どうして・・・。」
露伴「・・・。」
梨花「なによ・・・アンタなんて来なければよかったのに・・・。
皆が力を合わせても、勝てないなんて知りたくなかった・・・。
何よ・・・、あんた何なのよ・・・。」
露伴「・・・。
他の山狗達が来ると面倒なんでね、さっさと終わりにさせてもらうよ。
・・・天国への扉(ヘブンズ・ドアー)。」
ドシュシュシュッ
露伴は梨花に天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使い、書き込む。
梨花はそのまま意識を失った。
75 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:24:40.57 ID:RGGpyKaB0
羽入「露伴ッ!?梨花になにをしたのですッ!?」
露伴「"この世界では殺されるまで目が覚めない。"、
そして、"この岸辺露伴と出会った世界の記憶を失う。"
そう書き込ませてもらった。」
羽入「なぜなのです、露伴ッ!あなたは鷹野の味方なのですかッ!?」
露伴「勘違いするなよ。僕は誰の味方でもない。
だが、漫画の題材に干渉することが嫌いでね。
だから、この世界はなかったことにする。
ジョーカーが2枚あるババ抜きは、やりなおさなくっちゃあな?」
羽入「あなたは・・・最初からボク達を助けるつもりがなかったのですね。」
露伴「そうだよ。圭一君たちが殺されるところに間に合わなかったのは、
わざとじゃあないがね。もし間に合っていても、助けなかったよ。」
羽入「恩を仇で返すというのですか?」
露伴「この世界に連れてきてもらったことは感謝してるよ。
でも、僕が干渉して、鷹野を倒せば、それで済むのかい?」
羽入「・・・。」
77 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:25:47.08 ID:RGGpyKaB0
露伴「鷹野以外の人間が梨花を殺しに来るかもしれないぞ?
僕だって、いつかは元の世界に戻ることになる。
そうしたら、誰が梨花を、村を守るんだ。」
羽入「それは・・・、でも、今見殺しにする理由にはならないのです!」
露伴「・・・。
もうひとつの理由は、おまえと梨花が気に食わないからだ。
傍観者を気取った神に、自分を魔女だと言い、賽を振り続けるガキ。
気に食わないね。」
羽入「僕は露伴をこちらの世界に連れてきたのです。」
露伴「それで?そのあとは僕が勝手に敵を倒してくれるのか?
梨花だってそうだ。入江と僕を会わせてみたりはするが、それっきり。
皆が力をあわせても勝てないだって?その皆っていうのにお前ら二人は含まれないのか?」
羽入「あぅあぅ・・・。」
露伴「ふん・・・、だから、少しばかり意地悪をさせてもらったよ。
もう1つ。梨花に書き込んだことがある。
それは、"羽入が全力で協力しない限り、この古手梨花は幸せになれない。"だ。」
羽入「・・・。」
露伴「まぁ、これから記憶を消されるおまえに言ってもしょうがないことだけどな。
それじゃあ、記憶を消させてもらおう。天国への扉(ヘブンズ・ドアー)ッ!!」
ドシュシュッ
『この岸辺露伴と出会った世界の記憶を失う。』
『この世界では梨花が殺される直前まで目を覚ますことはない。』
羽入は意識を失った。
78 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:27:08.25 ID:RGGpyKaB0
沙都子は不思議な光景を見ていた。
露伴が助けに来てくれた。そこまでは不思議ではなかった。
だが、露伴の近くには不思議なぼんやりと光る少年の姿がある。
鷹野は顔や体が本のページになり、それが鷹野であるのかすら疑わしい。
さらには宙に浮いた巫女服の少女まで現れた。
発症した沙都子にはスタンドが見えるようになっていた。
だから、さきほどから露伴が梨花を本にしたり、
宙に浮いた少女を本にしたりする不思議な光景に、息を呑んでいたのだ。
露伴「さて、沙都子ちゃん。申し訳ないけど、君ともお別れだ。
仮に僕がこの場で君を助けても、君は発症してしまう。
だが置いていけば、殺されるか、実験の材料にしかならないだろう。」
露伴はそう言いながら、沙都子を縛り付けている縄を切った。
露伴「僕には、せめて安らかにいかせてあげることしかできない。」
79 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:27:41.26 ID:RGGpyKaB0
沙都子には、露伴の言う意味は難しくてわからなかった。
だから、今の沙都子に答えられる、精一杯の答えをした。
沙都子「私は、露伴さんを信じていますわ。
だから、露伴さんの思うとおりにしてくださっていいんですわよ。」
露伴「・・・ありがとう。
天国への扉(ヘブンズ・ドアー)・・・。」
ドシュッ
『安らかに逝く』
露伴の横に現れた少年が指先を光らせたかと思うと、
沙都子は体に力が入らなくなった。
そのまま地面に倒れこむが、痛みはなかった。
意識が薄れていくが、恐怖や不安はない。
むしろ、心地よいくらいだった。
81 名前: ◆rp2eoCmTnc [] 投稿日:2008/03/29(土) 22:28:14.90 ID:RGGpyKaB0
意識が完全になくなるまえに、
沙都子は親友の顔を一目見ようと梨花に焦点をあわせる。
親友は顔が本になっていたが、可愛い寝顔を見せてくれた。
そして、その顔のページには、後から書き加えられたような。
他とは違う文字でこう記してあった。
"いつか、仲間達とともに幸せな昭和58年7月を迎える。"
その文字を見つけた直後、沙都子の意識は完全になくなった。
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